学生時代、懐かしく思い出すのは大学近くの定食屋。今も店主たちは、変わらぬ味と笑顔で出迎えてくれる。そんな「わが大学の人情定食屋」のひとつ、京都大学近くにある『お食事処 白川 大銀』を紹介しよう。
「沢山の注文を一つも間違えずウグイス嬢のような声で厨房に伝えていた女将さんが懐かしい」という50代男性、「僕も55歳の父も通っていた」という30代男性の話を聞いて訪ねた『白川 大銀』は、単品から定食まで80以上のメニューが並ぶ昔ながらの食堂。
女将の渡邊敦子さんの実家が食堂だった縁で、内職程度のつもりで昭和52年に始めたという。
「この辺は各家庭で下宿をしていて、うちでも多い時で4、5人置いてたかな。当時は7割がたが学生客で。朝から晩までお客さんが切れることがなく、日曜日には外に並んでました。今は56席ある1階だけを使ってますが、40人は入る2階の座敷を使っても足りず、廊下まで詰め詰めで。運動部の団体が重なると大変やったね」と店主の絋治さん。
ボリュームが多いにも関わらず、アメフト部の学生は1人でお盆2つ分は食べたという。アルバイトも多い時で日替わり20人雇い、なかには浪人時代から5年間辛抱強く続けた学生もいた。バイトの台湾人留学生が困っていた時はマンションの保証人になり、3年前には台湾に遊びに行ったと夫妻は嬉しそうに話す。
「このあたりだけで10軒あった食堂も、残ってるのはうちだけ」
だからこそ、連休にはお馴染みだった卒業生が多く立ち寄ってくれる。
【住所】京都府京都市左京区北白川上別当町4
【営業時間】11~15時、17 ~21時
【定休日】日曜
撮影■WEST
※週刊ポスト2012年2月3日号