城南信用金庫(東京・品川区)は、1月1日午前0時、東京電力との契約を打ち切り、PPS(特定規模電気事業者)の最大手であるエネット(東京・港区)から電気を購入し始めた。吉原毅理事長に“脱東電”の試みと、コスト削減効果をジャーナリストの小泉深氏が聞いた。
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――切り替えに伴って、東電や財界からの圧力はありませんでしたか。
吉原:ありませんでした。もしあったら、大問題ですけどね。むしろ、会見で東京電力との訣別を発表したことで、顧客である個人のお客様や取引先企業をはじめ、多くの方から応援の声をいただきました。
――単に一企業の節電の取り組みにとどまらない意味があったと?
吉原:まず、基本的な考えとしてあるのが、節電努力により電力の総需要が減れば、東電が主張している電力不足が解消されて原発を再稼働する必要性はなくなるということ。そして節電には、電力使用状況が一目でわかる、エネットの “見える化”のサービスのメリットは大きい。PPSのサービスが電力消費を抑えることに繋がるのです。
その上で、多くの企業が電力会社を切り替えてPPSの利用が進めば、東電など原発を持つ電力会社の需要が減り、ますます原発を維持する論拠がなくなるはずだ、と考えています。
しかし、PPSについては、最近でこそ少し話題になっていますが、あまり知られていない。例えば、大企業ではなく小規模なビルでも、高圧契約ならばPPSは利用できる。それに、電気代が安くなる。そうしたことを多くの方に周知したかったのです。
「(城南信金は)結局、コストダウンだけが目的じゃないか」というご批判もありましたが、それなら黙って切り替えればいい。会見したのは、電気代が安くなることなどが広く知られ、利用する人が増えたほうが、脱原発につながるという思いからです。
――電気代はどれくらい安くなるのですか。
吉原:2010年度の電気代は約2億円でしたが、約5.5%、金額にして約1000万円のコストダウンになる見込みです。総合的に見て、企業にとってメリットがあると思います。原発に対する賛否は別にして、コスト削減だけでもやる価値があることを皆さんには知っていただきたい。
※SAPIO2012年2月1・8日号