年明けの1月2日、福島市には432メガベクレル/平方km という、直近の観測量の実に30倍のセシウムが降った。さらに、いったんは落ち着きを見せたと思われた15日にも再び200メガベクレル/平方kmに近い値が観測されたのである。
いずれの数値も、福島県原子力センター福島支所で観測されたものだ。
そもそも震災から10か月が経っているのに、なぜこんなことが起きたのか。当初はその原因について、「福島第一原発4号機から放射性物質が拡散か」「東電は新たな事故を隠しているのでは」などの憶測が流れた。
しかし、専門家によると新たな放射性物質が拡散している可能性は低いという。近畿大学原子力研究所講師の若林源一郎さんは次のように話す。
「福島原発に何らかの異常が起きて放射性物質が拡散したとすれば、空間線量も一気に高まるはず。ところがそういうデータは現時点では出ていませんから、その可能性は低い。おそらく風で放射性物質の付着したもの、例えば土埃などが巻き上げられて、再浮遊したのではないでしょうか」
文部科学省でも「風によって舞い上がった砂粒が原因」(前出・支援本部)との見方だが、中部大学教授の武田邦彦さん(資源材料工学)は別の可能性を示唆する。
「放射性物質が付着したゴミや瓦礫の焼却が原因ということもあるのではないでしょうか。調べてみたところ、風の強い日と観測値が高い日が合っていないものですから、風だけを原因と考えることはできないと思います」
結局、観測値が急増した1月2日から3週間あまり経ったいまもなお、その原因は不明のままだ。
こうした痛切な声に答えるために、一体どのような対策を講じるべきなのか。前出の武田さんは次のように答える。
「観測値が100メガベクレル/平方キロメートルを超えたあたりで政府は警報を出すべきだと思います。現時点では数日遅れで情報を公表していますが、いまの体制では仮に多くのセシウムが舞った場合、発表を待っているうちに被曝してしまいます。降下量が多い場合、子供の外出を控えさせるとかマスクを着用させるとか、そういうことができるような体制を整えることが必要でしょう」
さらに武田さんは続ける。
「福島でこれだけ観測値が高まったのですから、周辺の地域も警戒が必要です。原因究明のためにも、多くの地点で観測がなされることが重要になります」
※女性セブン2012年2月9日号