白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏によると、1日の運動時間と寿命には、密接な関係があるという。以下、白澤氏の解説だ。
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運動が体に良いことは皆、知っている。しかし、生活習慣病を予防するために具体的にどの程度の運動を週に何回くらいすればいいか──診断に訪れる患者さんに指導するたびに迷う。
2008年のWHOの運動ガイドラインによれば、週に150分の中等度の運動が推奨されている。すると週に5日間運動する人の場合、1日あたり30分程度の運動をすることになる。
台湾の国立彰化師範大学のポウェン・ク博士らは調査対象を、ほとんど運動しない群(約22万人)、1日に約15分、週に平均92分の運動をしている低運動量群(約9万人)、週に150分のWHO基準を満たす中等度以上の運動量群(約10万人)の3群に分類し、各群の死亡リスクから平均余命を計算した。
すると、低運動量群は運動をほとんどしない群に比べて、全死亡リスクが14%、がんによる死亡リスクが10%低かった。さらに、30歳時点での平均余命は男性で2.55年、女性で3.10年長かった。
一方、WHO基準を満たす中等度以上の運動群は、運動をほとんどしない群に比べて全死亡リスクが26%、がんによる死亡リスクが17%低く、30歳時点での平均余命は男性で4.21年、女性で3.67年長かった。運動時間の効果に関しては、運動時間が15分延長するごとに全死亡リスクが4%、がんによる死亡リスクが1%ずつ減少した。
つまり運動の健康増進に対する効果は、運動時間が長ければ長いほど高いこと、1日15分の運動でも十分に効果があることが分かったのである。
※週刊ポスト2012年2月10日号