業界の2強による「節水競争」がついに4リットルの壁を越えた。鎬を削る業界の2強によるトイレの節水競いで、強烈なライバル心が驚異の節水を実現させた――。
トイレ1回あたりに流れる水量が4リットル。2011年4月にINAXが所属する住生活グループLIXILが発売した『アメージュZ』をはじめとする超節水トイレが人気を博している。
トイレの節水競争で熾烈な戦いを演じているのは、LIXILとTOTO。長い間13リットルが主流だった洗浄の水量。INAXが1998年に10リットルを達成すると激しい節水競争が繰り広げられてきた。
2009年、TOTOが5リットルの壁を越え、4.8リットルを実現。市場で大きな話題になった。一方のINAXではこれに対抗するモデルをすぐに送り出さなかった。もちろん座視していたわけではない。
4リットルの水量を最大限に活用するタイミングを計るチューニングが続いた。まるで精巧な機械式時計を作るかのような作業は地道に続けられた。
朗報は突然やってきた。あるとき、開発グループのグループリーダー・山道明氏が部下から効果を見て欲しいといわれ実験室へ足を運ぶと、4リットルの水が勢いよく流れ、汚物に見立てた粘土をきれいに流し込んだ。
洗浄の操作後、1秒前後の時間差で水流に勢いをつける「エアドライブユニット」が機能し始める。設計をすべて見直し、絶妙なタイミングを割り出した自信作だった。開発を始め、すでに3年を迎えようとしていたときだった。
この「ECO4」を採用した超節水トイレなら、水道代は、13リットル時代のトイレに比べ、年間約1万4700円(4人家族を想定)も節約できる。
同社衛陶開発グループのグループリーダー・山道明氏はいう。
「お客様が望むなら、さらなる節水も目標に掲げます。まだ無駄を省くことができるのか、ですか? 自分の意識を変えればすべてが変えられるんです」
※週刊ポスト2012年2月10日号