ロンドン五輪に向け、様々な競技で日本代表が決まりつつあるが、女子マラソン五輪代表は毎度毎度なぜモメるのか。日本陸連が設ける代表選考基準は「五輪で活躍が期待できる選手」と依然曖昧なものである。
スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏が指摘する。
「有力選手の出場レースが分散するということも選考を難しくしているんです。米国は1本勝負で、1レースで決めてしまう。五輪を目指す選手は一つのレースに集い、しのぎを削るというのがシンプルでいい。選手からすればピークを一度のチャンスに持ってくるのは過酷でしょうが、コンディション管理もアスリートの資質の一つですからね」
ただ、日本のレース事情が、それを難しくしているという。谷口氏が続ける。
「レースには新聞社、テレビ局がスポンサーとして付いており、それぞれ社も違う。億単位といわれる放映権料が協賛金として陸連に支払われています。スポンサー側としては、選考レースから漏れれば視聴率が落ちるし、陸連側からしても資金面からレース数を減らすことは避けたい。だから、毎回問題視されつつも、どのマスコミも選考レース一本化を主張しないんです」
選手の分散にもテレビ局側の意向が絡んでいるという。主催者側は視聴率などを考え、目玉選手を出場させたい。その意を汲んで陸連としてはバランスをとって出場させようと選手、あるいは所属企業に働きかける。だから有力選手が直接対決する機会がなく、誰が最も強いのかが不明瞭な構造になっている。
※週刊ポスト2012年2月17日号