その発生が迫りつつあるといわれている、マグニチュード7級の首都直下型地震。直下型地震の場合、まず考えるべきは揺れへの備えということになるが、ひとつの地震でもその地盤の種類によって、揺れの大きさは異なってくるという。
揺れの大きさを左右する地盤は、日本では一般的に上の層から表土、沖積層、砂れき、洪積層によってできている。地震災害に詳しい一級建築士の井上恵子さんが解説する。
「沖積層とは現代から2万年の間に作られた比較的新しい地層。河川などで運ばれた腐葉土や泥土でできている軟弱な層です。これに対して、洪積層は2万〜200万年ほど前に作られた古い地層。岩盤といってもよい硬い層です」
建築基準法では、この沖積層と洪積層によって地盤を3つに区別している。すぐ下に岩盤や硬質砂れき層など硬い地盤で構成されているのが第1種地盤。第3種地盤は、腐葉土や泥土などが直下に存在し、硬い地盤まで30m以上の距離がある所。第2種地盤は第1種と第3種の中間を指す。
表土から30m以上の深さまで、軟らかい沖積層と砂れきが存在する第3種地盤が、最も軟弱となるが、首都圏の建物のほとんどがこの第3種地盤の上に建てられているという。
「海に近い首都圏のほとんどは第3種地盤なんです。加えて、関東平野には富士山の火山灰が降り積もってできた関東ローム層が広がっているのですが、これが極めて軟らかい地盤なんです」(井上さん)
港湾が発達し、電車の路線や道路など交通網も海に近い第3種地盤の上に多く位置する首都圏。それにしたがって、多くの住宅がこの軟弱な地盤の上にある。地震問題に詳しい不動産コンサルタントの平野雅之さんがいう。
「首都圏の海に近い場所は人工の埋め立て地が多く、そうした場所の下は不安定な沖積層。緩い地盤となります。地震が起きれば、揺れは大きく増幅されてしまうでしょう」
こうした軟弱な地盤の上に家やマンションを建築する際には、地中深くにある硬い洪積層まで基礎杭を伸ばすのが、いまでは一般的。しかし、2000年以前に建てられた住宅については注意が必要だと、井上さんは指摘する。
「2000年に建築基準法が改正されて、地盤の強さに応じた基礎が必要となりました。ですが、それ以前の建物は地盤調査がなくても建築許可が下りたんです。特に、一軒家の場合は経済的な理由から軟弱な地盤に対する適切な基礎工事を行っていない可能性があります。首都直下型地震の危機が叫ばれていることを機会に、地盤の強さから自宅の基礎、耐震強度まで見直してみるとよいでしょう」
※女性セブン2012年2月23日号