1月31日の参院予算委員会中に無断で約15分間不在にし、秘書官に風邪薬を取りに行かせる間、国会内の食堂でコーヒーを飲んでいた田中直紀防衛大臣。
田中氏は6日の同予算委員会で「(食堂には)薬をのむための水があったが、日ごろのクセで、ただ座るのではなく、コーヒーを頼む精神だった」などと珍釈明した。いまだに野党などから田中氏の大臣としての資質を問う声は消えていないが、当サイトでは医学的な見地からこのコーヒー騒動に注目してみた。
そもそも、風邪薬とコーヒーというのみ合わせ、あまり良くないんじゃ…? 飲み物の種類によっては、薬といっしょにのむのはよくないものもあるが、コーヒーの場合はどうなのだろうか。横浜薬科大学臨床薬学科教授の池田敏彦さんはこう語る。
「コーヒーに含まれるカフェインは、さまざまな薬に対して相互作用を示します。カフェインには心臓をドキドキさせたり、興奮させ眠れなくする作用がありますが、カフェインを含む薬やカフェインと似た化学構造を持つ成分を含む薬とののみ合わせにより、薬が2倍効いてしまうような状態になり体に負担をかけてしまうのです。
一般的な風邪薬ではほとんど影響はないと考えていいですが、眠気を抑える作用のある一部の風邪薬にはカフェインがはいっているものもあるので、その作用がより強くなることがあります。喘息や咳止めの薬などは要注意で、カフェインと相互作用する薬が多いですね」
今回、田中氏は“コーヒーブレーク”し、その直後に水で風邪薬を飲んだとみられるが、いっしょにのんでいなくても直前にコーヒーを飲んだ場合にも注意が必要だという。
「カフェインは体内で大体4~5時間は体に残るので、大量のコーヒーを飲んだ後、カフェインと相互作用する薬をのむ場合、5~6時間は待ったほうがいいでしょう。心臓がすごくドキドキしたり目が回ったり、最悪の場合は不整脈を起こして死に至ることもあります。個人差もありますので、コーヒーに敏感な人ほど注意が必要です」(池田さん)
ちなみに、コーヒー以外の飲み物と薬ののみ合わせについてはどうだろう。薬剤師の資格を持ち、医療分野でコンサルティングなどの活動を行う三上彰貴子さんが解説する。
「牛乳は、胃に影響のある一部の薬に対しては胃を保護することがありますが、薬といっしょに飲むのは避けたほうがいいでしょう。牛乳にはカルシウムや脂質が含まれていますので薬と反応したり、薬の吸収を妨げてしまう可能性があります。グレープジュースも、高血圧の薬など一部の薬では成分が分解されたり、吸収されにくくなったりします。
もっとも懸念されるのは、お酒です。薬の作用が弱まったり逆に強まったりするだけでなく、アルコールが薬の成分を変化させてしまったり、眠気を助長させて急に昏睡状態にさせてしまったり、とても危険。また、一般的によくないといわれているお茶ですが、以前は一部の薬の成分(鉄剤)がお茶のタンニンと反応して吸収が悪くなるといわれていましたが、いまではそれほど影響がないとされています。ただ、濃いお茶はタンニンやコーヒーと同じくカフェインも多く含まれていることがあるので、のむ薬の種類によっては注意が必要です」