中国、ロシアといえば、日本にとって厄介な近隣諸国というイメージだが、中露関係は緊密かと言えば、必ずしも単純にそうとは言えない。日本の外交を鋭く批判する新刊『国家の「罪と罰」』(小学館)の著者・佐藤優氏(元外務省主任分析官)は、両国間の複雑な関係を説明する。
* * *
ロシア人の中国に対する警戒心と嫌悪感は国民の草の根レベルまで浸透している。
これには、歴史的背景がある。ロシア語では中国のことを「キタイ」という。この語源は10世紀に現在の中国北部に「遼」という国を建国した遊牧民族「契丹」だ。ロシア人は、中国が契丹のように国境を越えて侵略してくるのではないかという恐れを持っている。
日常語でも、悪性のインフルエンザを「中国風邪(キタイスキー・グリップ)」という。また「あいつは中国人百人分くらい狡い」という表現があり、卑劣な人間を罵る時に使う。現在、ロシアと中国は「戦略的パートナー」であるが、ロシア人の感覚からすると「戦略的(ストラテギーチェスキー)」とは、「お互いに後ろから斬りつけない」「人前でつかみ合いの喧嘩をしない」程度の意味だ。
※『国家の「罪と罰」』より抜粋