大阪では、橋下徹市長が「君が代不起立」の厳罰化を目指していることに一部教職員が猛然と反旗を翻している。反対する教師の意図とは何か。ジャーナリストの鵜飼克郎氏が現場をレポートする。
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本誌も詳報したが、大阪府門真市立第三中学校の卒業式で君が代のメロディが流れた時、出席していた11名の教員のうち生徒のそばに並んでいた8名の教員ばかりか(他3名は卒業証書を手渡す役と会場外の警備役)、なんと、卒業生160名のうち1名を除いて全員が着席してしまったのだ。
「生徒たちは式直前のホームルームで、担任から『先生は起立しない。みんながどうするかは自分自身で考えて決めなさい』と言われたようです」(門真市教育委員会関係者)
この「事件」が新聞報道されると、学校に抗議電話が殺到した。結局、翌2009年2月、8人の教員は門真市教育委員会から文書訓告や口頭厳重注意の処分を受けた。これに続き、2009年度に4人、2010年度に1人、2011年度に2人の戒告処分者が出た。しかし、「不起立者の数ははるかに多い」と、前出の元府立高校校長は話す。
「毎年30~80人の不起立者がいるのが実情です。しかし、処分者を出せば職場の人間関係がギクシャクしてしまうので、大半は校長からの厳重注意にとどめてきた。また、不起立派の教員は式典の時に会場外の警備にあたらせるなど、問題が起こらないように工夫している学校もあります」
橋下氏は現場のこうした馴れ合いを批判し、維新の会が国歌起立条例案を府議会に提出した頃、次のように発言していた。「起立しない教員は意地でもやめさせる」「起立しないなら府民への挑戦」「公立の教員は公務員組織の一員。職務命令に従うのは当たり前」「バカ教員の思想良心の自由よりも、子どもたちへの祝福が重要」……。
橋下氏がこれだけ強い言葉で非難する背景には、大阪に限らず、一般国民の常識からかけ離れた行動を取る教職員が少なからずいるからだ。例えば、東京には「不起立のジャンヌ・ダルク」と呼ばれる女性教諭がいる。彼女は「不起立」で繰り返し処分を受けても“筋”を曲げず、普段から学校で「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」とプリントされたトレーナーを着るなどしてきた。また、式典で日の丸を舞台袖のカーテンの裏に置き、参列者から見えないようにする教師なども、これまで度々問題視されてきた。
※SAPIO2012年2月22日号