ひと昔前には、お父さんたちの接待の場だった寿司店。だが、いまではファミリー層や女性をターゲットにした店も増えている。そして客層だけではなく、寿司職人にも女性が増加中。寿司チェーン『すしざんまい』でも女性職人が数名在籍しているという。寿司業界でも女性の進出は目覚ましいのだ。
そんななか“寿司を握るのは女性だけ”というコンセプトの『なでしこ寿司』(東京・秋葉原)は2010年10月にオープンした当時、かなり注目を集めた。しかし、すぐに話題にも上らなくなってしまったという。
再注目されるきっかけは、昨年の女子サッカー『なでしこジャパン』の活躍だった。“なでしこつながり”で見事業績は上向く。それは、いよいよ閉店せざるをえないかと決断する瀬戸際だったという。
運営する『プロフィティ』は飲食業界とは無縁の半導体関連の人材派遣会社。代表の錦織和也さんは女性の雇用の場を広げるために思いついたのが寿司店だったと話す。
「リーマンショックによる派遣切りで、当社に所属する多くの人が職を失いました。1年くらいで男性の求人は回復したものの、女性は回復の兆しすらなかった。だから女性に雇用を広げたい、それも男中心の職場に切り込みたいという思いで始めたんです」
女性料理人が増えてはいるものの、寿司店のカウンターにはいって握れる女性職人はまだまだ少ない。
「カウンターを挟んで客と対峙しながら接客するのは女性が得意とするところ。きちんと握れるようベテランの料理長がトレーニングを行い、合格したスタッフのみがカウンターにはいれるようにしています」(錦織さん)
仕込みは奥の調理場にいる男性料理長に頼っているが、毎日時間をみては魚の勉強、だしの取り方など、基本的な料理を勉強し、レベル向上に努めている。
女性スタッフは10名で、常時3~4名がカウンター内で寿司を提供。その中のトップ千津井由貴さん(25才)は、デパ地下の寿司店で6年勤務。
「デパ地下時代は厨房に立ち入ることも許されず、女性が寿司を握るなんて全く考えられませんでしたが、ここでは握らせてもらえる。米と魚などのネタだけで、ここまで完成された料理は寿司以外にはありません。色彩もきれいだし、デコ巻きなどを考えるのも楽しい」(千津井さん)
※女性セブン2012年2月23日号