アジア全域の駐留米軍を射程にした中距離ミサイルを増強し、空母を保有する中国。一方のアメリカも近年、中国の軍事的脅威に対する研究を強力に進める。アメリカの中国との付き合い方は、日本のそれとは正反対だ。産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久氏が、中国研究の第一人者として知られる国際教養大学理事長・学長の中嶋嶺雄氏と語り合った。
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古森:私は北京駐在の後半に、アメリカを専門に研究している中国の知識人――政府関係者ですが――と親しくなったのですが、彼が流暢な英語で「日本と中国はひとつの国になるのが自然じゃないですかね」と本気で言うんです。
で、文化も言語も違うのはどうするのかと聞くと、「言葉はやっぱり大きい国の言葉でしょう」と言うわけです。
中嶋:まさに「中華思想」ですよね。これはとても根が深い。われわれもよほど身を構えていかないといけない。
古森:アメリカの場合には、基本的な価値観の違いを少なくとも国政レベルで認識しています。だから、日本の議員のように訪中して最高指導者に会いたいなんて言う人たちはいない。
胡錦濤が訪米した時でも、議会でのパーティで議会の側からは写真は撮らなかった。胡錦濤と並んでいるところを写真に撮られるのを嫌がるアメリカ議員の声が多くて禁止になったんです。中国は大変怒りましたけどね。日本の国会議員と正反対です。
アメリカ側のそんな姿勢の背景には、一党独裁で人権を弾圧し、国民の自由な選挙で選ばれた指導者ではないという基本的な体制・価値観の違いへのはっきりした認識があります。
中嶋:なるほどね。日本はその点、中国との関係を「同文同種」といった言葉で括ろうとしますが、そもそも無理がある。中国の文化を学んだことは事実ですが、明治時代はヨーロッパの近代化を学び、戦後はアメリカ民主主義を学びました。
中国から漢字文化を学んだとはいえ、日本独自の文字をつくり上げてるわけです。独自の美意識もある。
古森:日本でも中国との相容れない価値観が厳存することを認識して、もう少し国政、あるいは外交そのものと結び付いた中国の軍事動向への対応、情報収集活動も含めて新しい枠組みへの動きがあってしかるべきだと思うのですが。
※SAPIO2012年2月22日号