環境省による除染作業の工程表が発表されたが、問題は、費用がどの程度まで膨らむのか皆目見当がつかないという点だ。いったい何が起ころうとしているのか。ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。
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除染作業に暗雲が垂れこめている。
環境省は1月26日、国が直轄で進める除染作業の工程表を発表した。工程表によれば、今春以降順次、本格的に除染作業に着手し、2014年3月末の完了を目指すとしている。
除染作業に関しては、福島原発から半径20キロメートル以内の立ち入り禁止区域(警戒区域)は国が直接作業を行なう(国の直轄区域)。それ以外は国が予算を負担して各自治体が行なう。
もっとも一連の除染作業については、もうすでに民間業者が請け負う形でこれまでも作業が進められてきている。関西に本社を置く中堅ゼネコン社長が言う。
「通常の公共事業と同じ形で仕事を請け負っている。つまり大手ゼネコンが元請けで、ウチはその下請けだ」
だがこの除染作業に関して悩ましいのは、費用がどの程度まで膨らむのか皆目見当がつかないという点だ。
「大きな声では言えないが、まともにやったら費用が数十兆円規模まで膨らんでいくのは確実」(前出の中堅ゼネコン社長)
作業のやり方しだいでは、「除染バブル」とでも言うべき状況にもなりかねないのだ。
「だからといって青天井でそれを認めるわけにはいかない。国が全額負担する以上、当然ながら予算の制約がある。除染作業はその範囲内で行なわれることになる」(財務省幹部)
つまり除染作業については必要とされるところに対して完全に実施されるというわけではないようだ。
「加えて実際に作業を進める側にも問題が出てきた。この除染作業は、現場の作業員にことのほか負担を強いることがわかってきた。作業員は想定をはるかに超えたレベルで精神的、肉体的ダメージを受けているのが実情だ。充分な数の作業員を確保していけるのかどうか、非常に不安だ」(前出の中堅ゼネコン社長)
のっけから工程表通りに作業を進めることは難しくなってきた。
※SAPIO2012年2月22日号