民主党の野田政権が消費税増税を推し進めようとしているが、それに対し小沢一郎元代表は反増税の立場を鮮明にしつつある。小沢氏はよく、目指す制度改革を「旧体制のアカを落とす」と表現する。旧体制で力を握ってきた霞が関や大メディアがそれを嫌がるのは当然だが、その一味には経団連を中心にした旧態依然の大企業もいる。
経団連が、景気を冷え込ませる消費増税に賛成しているのは、「大企業への補助金」といわれる消費税の輸出戻し税があるからだ。
「税率を5%上げれば輸出戻し税も2倍に増えて財界の主要企業は儲かります。この特権を見直せば、税率を上げなくても税収は増えるし、財界はもっと冷静に増税の影響を考えるようになる」(小沢グループ議員)
説明が必要だ。
消費税は流通段階で価格に転嫁され、最終的に消費者が負担するが、海外の最終消費者からは税を取れないという理由で、輸出製品には仕入れ段階で課せられた消費税を企業に還付している。これが輸出戻し税で、還付額は年間約3兆円。自動車、電機など大手メーカーは、納める消費税より還付金の方がはるかに多く、輸出上位10社でざっと1兆円近くが戻されている。
税理士の湖東京至・元関東学院大学法科大学院教授は、税制の矛盾を指摘する。
「政府は消費増税分をすべて社会保障に回すという。現在の5%の消費税も基礎年金、医療、介護の財源という建て前です。そうすると、輸出大企業は社会保障財源から補助金をもらっていることになる。『租税は各人の能力に応じて平等に負担されるべき』という租税立法上の原則に照らしても、輸出戻し税の還付金制度は廃止か停止すべきです」
※週刊ポスト2012年3月2日号