日米の株価が大きく乖離している。昨年1年間で日経平均は17.3%下落し、NYダウは5.5%上昇した。アメリカ企業の多くが業績を伸ばし、日本企業が総じて低迷したからである。では、日本企業はどこで道を間違えたのか。大前研一氏が解説する。
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日本企業が低迷している本質的な理由は、マーケットの大きなトレンドや世界の動きを踏み外すようになったことである。
たとえば、日本企業はデジタル化とはどういうことかがわかっていない。アナログは創意工夫で差別化できたが、デジタルは部品が同じであれば性能は同じなので差別化が難しい。
また、アナログは累積生産台数が倍になるごとに習熟曲線が効いてコストが10~15%下がるから、先行者が強かった。しかし、デジタルは回路をプリントするだけなので、習熟曲線が関係なく、後発でも安いほうが強い。この基本的な違いを日本企業は正しく理解していないのだ。
その象徴がテレビである。日本の電機メーカーは、国内で「家電エコポイント」やテレビ放送の地上デジタル化による特需があったにもかかわらずテレビ事業は赤字続きで、2012年3月期の業績見通しは大きく落ち込んでいる。
原因は円高やタイの洪水被害よりも、前述したマーケットのトレンドや世界の動きの踏み外しにある。つまり、日本の電機メーカーは薄型テレビの画面を大型化する方向に舵を切り、大型液晶パネルの製造工場に投資した。
ところが、今や液晶パネルの主戦場は、iPhoneなどのスマートフォン用やiPadなどのタブレットPC用の小型サイズに移っている。その分野は韓国のサムスンやLGが圧勝しているのだ。
※週刊ポスト2012年3月2日号