芸能

たけし分析「芸人の実力が人気に追いつくとブームは終わる」

『メルマガNEWSポストセブン』では、ビートたけし、櫻井よしこ、森永卓郎、勝谷誠彦、吉田豪、山田美保子など、様々な分野の論客が『今週のオピニオン』と題して、毎号書き下ろしの時事批評を寄稿する。2月24日に配信された4号では、ビートたけしが登場。これから3回にわたって、「ビートたけしの今週のオピニオン」を全文公開する。

 * * *
 太平シローが死んじゃった。まだ55歳だぜ、早すぎるよな。「ツービート」と「太平サブロー・シロー」は、『THE MANZAI』や『オレたちひょうきん族』でも一緒だった。いろんな思い出があるけど、シローちゃんは実力のある芸人だったからね。いい芸持っていたのに、ホントに惜しいよ。

 今回の訃報をきっかけに、サブロー・シローの漫才がテレビでけっこう流れてたけど、やっぱり面白いんだよな。話術も巧みだし、モノマネも笑えるよな。今の流行とは全然違う、懐かしい「味」みたいなものがあってさ。

 テレビにしろ、世の中ってのは、死んでから「いい人だ」「天才だった」って持ち上げるじゃない。「じゃあ、生きてる間にもっと応援してやれよ」ってツッコミたくもなるけどさ。まァ、そんなこといってもしょうがないね。

 シローちゃんは、芸はバツグンだったけど、実は精神的にちょっと脆いところがあってさ。

 いつだったか、当時オイラがやってた『平成教育委員会』に、シローちゃんをキャスティングしていたことがあって。ある時、なぜか収録をドタキャンしちまってさ。オイラが「レギュラーで頼むよ」ってオファーした時には、シローちゃんはすごく喜んでいたのに、突然パッタリ来なくなっちまったんだよな。

 その後、2、3か月くらいして「すいません、すいません」ってシローちゃんがオイラのところに謝りにきてね。オイラは「ゼンゼン気にしてないよ」「また一緒にやろうよ」って励ましたんだけど、結局芸能界からフェードアウトしていっちまってさ。今思えば、あの頃からちょっとうまくいってなかったのかもしれないよな。

 まァ、シローちゃんもオイラも、80年代の漫才ブームで世に出てきた人間でね。今も第何次だかわかんねェけど漫才ブームだろ。正直、今の若手のほうがオイラたちの時と比べて技術的にはだいぶ上だと思うんだけど、それが人気や視聴率に比例するかっていうと、そういうワケでもないんだよな。

 それが“ブーム”ってヤツの怖いところでね。技術的にはデタラメでも、芸の衝撃度とか物珍しさがあればブームになって、視聴率も上がるんだよ。だけど、芸人の実力が人気に追いついてきて「いい芸してるね」「技術があるね」なんて批評されはじめた頃には、もうブームは終わりに向かってるってことなんだよな。

 これがエンターテインメントってものの難しいところなんだけど、実は技術的にうまいか下手かというのは人気商売ではあまり問題じゃなくてさ。要は、衝撃的で、新鮮で、もう1回見たいと思えるかどうかってポイントに尽きるんだよ。「うまい漫才」を見たいってんなら、オイラより年上の大御所の漫才師たちが視聴率20%以上バンバン取れなきゃおかしいわけだけど、そうはいかないだろ。

 今のプロレスを見たってそうだよ。力道山が空手チョップで敵役のレスラーを張り倒していた頃には、プロレスの技術は低くても、今とは比べものにならないくらいの国民的な人気があったワケだよ。だけど、最近じゃいろんなプロレス団体が、アクロバットみたいなことをやったり、WWEみたいなドラマ仕立てのショーをやったり工夫してるけど、戦後の頃の客入りにはゼンゼンかなわない。まさに「成熟はブームの終わり」で、すべてのエンターテインメントってのは、技術が上がれば上がるほど食えなくなるという矛盾と戦っていくしかないんだよな。
(続く。次回は2月27日月曜日午前7時に公開予定)

※上記の記事全文は現在配信中の『メルマガNEWSポストセブン』4号で読めます。
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