<首都直下型地震は震度7もありうる>
大学や研究機関などが参加する文科省の研究チームは2007年から2011年にかけて行った調査に基づきこう見解を示した。
「これまで首都直下型の地震の震源は30kmから40kmと考えられていました。しかし、首都圏の地下に300台ほどの地震計を埋めて地下の状況の調査を行ったところ、震源がそれよりも10kmも浅いことがわかったんです。これによって想定震度が6強から7へと1段階上がると考えられるのです」(文部科学省地震・防災研究課)
これまで震度6強を最大の揺れとした東京湾北部地震が発生した際の被害予想を確認したい。この地震による死者は約1万1000人にも上り、21万人が負傷すると予想。さらに約700万人が避難し、うち約460万人が避難所生活を送ることになるという。
しかし、広島大学大学院の神野達夫准教授(地震工学)は1段階の震度の違いが生む衝撃のデータを明かす。
「震度6強の場合、一般的に建物全体の5%が倒壊すると定義されていたのですが、震度7の場合、倒壊の割合は30%にものぼります。単純に考えて5、6倍は壊れる建物が増えることになります。古い耐震基準で建てられた1981年以前の建物は特に心配です」
1981年に「震度6強の地震が来ても即座に建物が破壊されない」ことをめざして建築基準法が改正されてから、建物の耐震性は大きく向上した。実際1981年以降に着工された建物は、阪神・淡路大震災でも東日本大震災でもよく持ちこたえ、簡単に倒壊して死者が出た例はほとんど報告されていない。
それでも、震度7となると話が大きく変わってくる。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんがいう。
「新耐震基準の狙いは“震度6強まで耐えられる建物を作りましょう”というものでした。想定外の震度7で揺さぶられたら、1981年以降に建設された建物にも被害が生じる可能性は充分にあるでしょう」
実際にこれを裏付けるデータも存在する。政府の中央防災会議が公表している「全壊率テーブル」がそれだ。この表は過去に発生した地震の被害によって震度と全壊の関係を表にしたものだ。
これをみると、1981年の建築基準法の改正後に建てられた建物は確かに格段に丈夫なものとなっている。しかし、震度7の強い揺れの前では、木造建築では50%以上、非木造建築(コンクリート造)でも20%以上が全壊する可能性があることがわかる。
「震度6強から7に変わるだけで、3~4倍も全壊率が上がってしまうんです。このことを踏まえて考えると、建物の倒壊は6強の倍となる30万棟にも及び1万人以上もの人がそれによる圧死、つまり即死してしまうと考えられます。火災の被害も少なくとも倍以上となると考えられるので、東日本大震災に匹敵する数万人の命が危険にさらされることでしょう」(前出・島村特任教授)
※女性セブン2012年3月15日号