いまだ先行き不透明な米国経済、混迷の度を深めるユーロ危機、そして世界の工場であり巨大消費国として急成長してきた中国の急ブレーキ……。世界経済を黒く厚い雲が覆う中でも儲けている投資家はいる。彼らはいかに世界経済を読み、勝ち抜いているのか。
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「雇用統計などの重要指標の時には相場に参加しないのが鉄則」と語るのは、株やFXで資産25億円を築きあげた30代の個人投資家・板東洋平氏(仮名)だ。
ただし、同氏のこの先1年の目線は「円高継続」だ。
「いずれ日本の財政問題が火を噴いて円安に動く日は来るでしょう。しかし、米国の金融緩和延長や、大統領選挙を控えていることを考えても、“安いドル”政策は続く。
僕は、もし日本の介入がなかったら現在すでに1ドル=72円くらいになっていたと見ています。この先70円割れまで視野に入れています」
同様に、ユーロも弱く1ユーロ=90円割れまで見据えているという板東氏だが、「なぜそんなに円高が続くと思うのか」と問うと、意外な答えが返ってきた。
「日本は実は不景気じゃないからですよ。円高さえなければ、プラス成長になっているはずです。今は、米国により“作られた不景気”。日本経済が強いから円高になるのは自然だし、加えて、いわば米国の嫌がらせで円高にさせられている。その傾向は変わらないのだから、まだ円高は続くでしょう。
しばらくはドルやユーロが噴いたら(急騰したら)売りを繰り返すだけで利益が出る相場が続くと思います」
また、板東氏は円高で必要以上に株価が下がっている今が、株式投資のチャンスだとも分析する。特にスマートフォン関連企業や、復興需要関連企業などテーマ性のある業界の株は、すでに上昇し始めているが、まだまだ上値は狙えるという。
彼らの視点から共通して見えてくるのは、一見、暗雲が立ちこめている中でも、様々な情報の中から経済動向を見通すシグナルをキャッチし、独自に分析して光明を見いだしていることだ。大メディアは「不景気だ」「債務危機だ」と画一的に煽り続けているが、それに思考停止することなく常に経済動向を見据えてチャンスを捉えようという姿勢こそ、未来を切り拓く原動力となるのかもしれない。
※SAPIO2012年3月14日号