東日本大震災から1年。新聞・テレビにあふれる悲劇や美談だけでは大震災の真実は語れない。真の復興のためには、目を背けたくなる醜悪な人間の性にも目を向けなければならない。いま、被災地の瓦礫受け入れをめぐって各地で様々な騒動が持ち上がっている。
被災地の仮集積場に積まれた瓦礫の量は2247万トン。被災3県(岩手、宮城、福島)の10数年分の処理量に達する。
政府は瓦礫を全国の自治体に運んで焼却する「広域処理」を掲げているが、各地で「放射能を持ってくるな」と住民の反対運動が広がり、野田首相はついに「引き受け自治体にカネを出す」とまで言い出した。
新聞やテレビはその状況を、「瓦礫の押し付け合い」「住民エゴ」と報じているが、実態はまるで違う。水面下では、瓦礫は「カネの成る木」となり、「奪い合い」が起きているのだ。
意外に思えるかもしれないが、日本は「ゴミ不足」の状態にある。全国のゴミ焼却施設は約1600か所。全世界の7割の焼却場が集中している。ある自治体の清掃局担当者が語る。
「焼却場の多くは1基数百億円で建設された最新鋭施設で、有害なダイオキシンや煙を外部に出さないようにできている。だが、そうした焼却場には“弱点”がある。稼働させるには、24時間、一定の温度で燃やし続けなければならないのです。そのため、燃料のゴミが足りなくなっている」
そこに東日本大震災で大量の瓦礫が生まれた。大半は倒壊した家屋の木クズなど可燃ゴミだ。
「各自治体の清掃部門は瓦礫が喉から手が出るほど欲しい。震災瓦礫の輸送費は国が丸抱えで補助金もつく。これほど都合のいい燃料はありません」(同前)
環境省は震災直後の昨年5月、第1次補正予算で3500億円の瓦礫処理予算を組み、広域処理で全国に輸送する方針を決めて受け入れ先を募集した。すると500か所の自治体や企業が名乗りをあげ、なんと沖縄県も受け入れを表明した。
東北から沖縄まで瓦礫を海上輸送するとなるととんでもない運搬費用がかかる。瓦礫の広域処理で全国にゴミ輸送ネットワーク利権を張りめぐらそうというのが環境省の狙いで、産廃業界は特需に沸いている。
※週刊ポスト2012年3月23日号