年をとるごとに、欲望を感じることがだんだんと少なくなってきた。たまに「したい」と思っても、「いやいや、もう」と自分を抑えてしまう。
「若い頃とは心も体も変わってしまった」と感じ、枯れた境地に達したことを心地よく思ったりさえする……。
そんな中高年も多いかもしれないが、ちょっと待ってほしい。「年をとったからSEXはもういい」ではなく、年をとったからこそSEXが必要なのだ。
『40代からの心と体に効く[生涯SEX]のすすめ』(扶桑社新書)の著者で、世界一のED治療症例数を持つ竹越昭彦・浜松町第一クリニック院長は、その理由をこう語る。
「近年の医学研究では、SEXが、健康に多くのメリットをもたらしているとの研究結果が多数出ています。
例えば、心臓病や前立腺がんのリスクが減るというデータがある。心臓病の多くは動脈硬化が原因。ペニスの勃起は陰茎動脈の血流をよくし、老化によって硬くなる血管の柔軟性を取り戻します。SEXの際に勃起し射精することが、体内の他の血管に同様の作用をもたらす可能性があるのです」
実際に、イギリスで行なわれた914人の男性を対象とした調査では、「1週間に2回以上」SEXをしている男性の半数が、「1か月に1回未満」の男性に比べて心臓発作のリスクが低いことが判明している。
日本人男性の死亡原因として、年々増加の一途をたどる前立腺がんについても、オーストラリアのビクトリア州がん協会のグラハム・レジス博士が、前立腺がん患者1079人と健康な成人男性1259人を調査し、20~50代の男性では「より射精をする人ほど前立腺がんになりにくい」ことを明らかにした。
「SEXをしている人に前立腺がんが少ない理由は、射精する時に、前立腺が収縮を繰り返し、血流が促進されることが大きいと思われます。長期にわたって射精をしないと血行が悪くなり、前立腺が炎症を起こすことがある。これが、がんのリスク要因のひとつと見られているからです」(竹越氏)
さらには定期的にSEXをしている男性のほうが、していない男性よりも若く見えるという調査もある。また、性交時に脳内で分泌されるβエンドルフィンが多幸感をもたらし、ストレス解消や免疫力を高めることにもつながるという。
かように、元気で長生きするためにも、中高年男性にこそSEXが必要であることが明らかになってきているのである。
※週刊ポスト2012年3月23日号