文部科学省の調査によると、2010年度の大卒就職率は60.8%。これをもとに、大学を出れば約6割の人が就職できている、と考えるのは大きな誤解だ。
就職率のカラクリについて説明するのは、大学と専門学校の実態に詳しい実践教育ジャーナリストの松本肇氏である。
「大学の就職率は全大学の全学科が対象。だから超一流大学のエリートも、二流三流大学のつぶしのきかない学生も一緒くたになっている。一流大学が数字を稼いでいるので、二流以下の大学の就職率はこれよりもずっと低い。3~4割しかないという学部学科も多くあります」
また、昨今の就職難の問題が根深いのは、仮に景気が回復したとしても、採用増にそのまま直結するとは考えにくいことだ。
一部上場企業の人事担当者が声をひそめていう。
「かつてはとにかく人材の確保が叫ばれていましたが、右肩上がりの経済が望めない以上、状況が好転したとしてもコスト管理と人材のマネジメントには慎重にならざるをえない。勢い、正社員となれば即戦力、あるいは近い将来確実に会社に利益をもたらしてくれると計算できる人材しか迎えられない。正直にいって、大多数の企業において、大学時代に遊びほうけていた若者を会社で鍛え直す、というような余裕ができることは今後もないでしょう」
現在は年間約50万人が大学に入学する「大学全入」時代である。大学数は30年前に比べて約1.7倍に増えた。大学進学率は47.7%(2011年度)、昔なら大学に行くレベルではない子供まで大学生になっている。
前出の松本氏はこう断言する。
「一流といわれる大学に行ける人でないなら、大卒の枠にこだわっていてもあまりいいことはありません。中堅レベル以下の大学であれば、専門学校に行くほうがいい」
※週刊ポスト2012年3月30日号