陽光うららかな昼下がり。この日届いた宅配便を開封しようとした中井洽衆院予算委員長の議員秘書は、その中身に絶句した。
瓶詰めされた人間の小指、刃渡り8センチほどの包丁、小指を切断する一部始終が収められたDVD。そして「斬奸状」と題された手紙。
文末には血判が押されている。送り主は、広島県内の右翼団体のK会長である。
手紙には、一昨年11月29日の「議会開設120年記念式典」で秋篠宮ご夫妻が起立していた際、中井議員が「お座りにならないと座れないじゃないか」と発言したとされることなどに触れ、〈皇室を政争の具とし奉った〉〈天誅が降るものと覚悟せよ〉と綴られていた。
慌てふためいた秘書により、警視庁麹町署に届けられた小指の“持ち主”であるK会長に話をきいた。
「指は私のものに間違いない。中井代議士には、一昨年の皇族への不敬発言から抗議していた。それなのに昨年末、民主党の皇室の伝統・文化を守る議員連盟を作り、自らが会長となった。皇室を政争の具にしているとしか思えない」
だが一体なぜ小指まで送る必要があったのだろうか。
K会長は笑いながらいう。
「いえいえ、これは今回切ったものではない。昨年1月に断指したものです。小沢一郎の『政治とカネ』問題に続き、中井発言などで国内政治を混乱させた民主党宛てに、私は小指を切って“血の抗議文”を認めた。だから今回の血判にあたっては、右手の動脈を新たに切り血判をおしました」
K氏は公安警察にマークされる人物だった。今回に限らず、過激な政治運動を繰り返してきた。だが、その経歴で驚くのは、K氏自身が6年前まで広島県警にいたことだ。
「公安担当の刑事をしていました。退職の時は警部補です。右翼団体の取り締まりに当たっていました」
取り調べ相手への理論武装のため、数多の右翼思想の書籍を読み込んだ。気付くと活動家を取り締まることへの疑念が頭をもたげるようになったという。
「昔は活動家をマークするのが仕事でしたが、今では私担当の刑事さんまでいます。右翼活動家として今回の事件は逮捕覚悟です」
※週刊ポスト2012年3月30日号