映画『大学は出たけれど』を小津安二郎監督が撮ったのは80年前のこと。最近は、大卒就職率が30%しかなかった昭和初期を思わず想起してしまうほどの「氷河期」である。「サクラサク」の報せに喜んでいられるのもほんの束の間でしかない。ならばいっそ発想を変えてみてはどうか。“ボンクラ大学”に行くくらいなら専門学校に行け――実はこれ、教育業界では定説になりつつある。
実践教育ジャーナリストの松本肇氏は10年から『大学より専門学校がトク』(エール出版社刊)を毎年刊行し、学校の選び方を指南している。
文科省調査によれば、専門学校の就職率は74.7%(2010年度)。この就職難のなかでも100%近い就職率を誇る「スーパー専門学校」も存在する。
例えば、神戸市にある神戸総合医療専門学校の求人倍率(学生数に対する求人の割合)は、実に24.27倍(2010年度)というから驚異的だ。
同校は1974年に、医療法人が母体となって創設され、医療分野に特化した高い専門性が強み。理学療法士、診察放射線技師、言語聴覚士などの国家試験に高い合格率を誇る。
「資格を取れば、医療機関からの引く手はあまた。とくにリハビリ系の作業療法士や理学療法士は、求人倍率が30倍以上になることもあります」
と学校関係者。それだけに入学した後の勉強もハードだ。豊富な臨床実習を含むカリキュラムが週5~6日、みっちりと組まれる。
「国語、数学、英語、小論文などが課される入試の倍率は毎年2倍程度。近年では入学者の3割は社会人。やり直して資格を取ろうという動きが増えている」(前出・学校関係者)
学費は診療放射線技師で330万円(3年間)、理学療法士・作業療法士は480万円(3年間)かかるが、将来のことを思えば決して高くはないということだろう。
※週刊ポスト2012年3月30日号