「公務員の退職金が高すぎる」との批判を受け、川端達夫・総務相は「民間並みに退職金を引き下げる」と大見得を切った。しかしこの「退職金減額」には詐術が潜んでいる。人事院調査で公務員の退職金が民間を上回ったが、これまでの調査では常に「民間の方が少しだけ高い」という発表がなされてきた。
2006年調査では、民間は2980万円で国家公務員の2960万円より20万円高い。そして、「民間並みにする」という理屈のもと、退職金の底上げや職域加算の必要性を唱えてきた。ところが、同時期に行なわれた厚労省「就労条件総合調査」によると、大卒者の退職金平均額は2026万円で、人事院の調査と乖離がある。
「人事院の調査対象は企業規模が50人以上で、サービス業が除かれるなど、最初から“高給企業のみ”になっている。中小企業のサラリーマンの退職金や給与の実態は全く反映されていない。そもそも約4割の民間企業には企業年金がありません」(社会保険労務士の北村庄吾氏)
退職金の前提となる調査の「お手盛り」だけでなく、公務員の退職金には「二重取り」が横行している。官僚トップの事務次官の退職金は約8000万円であるが、彼ら「スーパー官僚」は“渡り”とよばれる天下りを繰り返して、複数の天下り先から2度目、3度目の退職金を得ている。
天下りの恩恵が少ない地方公務員には、「水増し」のテクニックがある。公務員の退職手当は、係長や課長などの役職に応じた「階級」と、勤続年数に応じた「号給」で決まるが、多くの自治体では「合成」と呼ばれる階級の操作で退職金を水増ししている。関東地方のA市役所職員が明かす。
「課長補佐は5級、課長は6級といった具合に、給料は階級ごとに増えます。簡単にいえば『合成』とは、5級と6級を合体して“新5級”を作り、課長補佐でも課長と同じ給与水準にすることです。退職金の額もそれに比例して増やすことができる」
退職直前に号給を引き上げる「特別昇給」という裏ワザもある。“勤続年数を延ばしたこと”にして、支給額を水増しするのだ。A市役所を例に取れば、課長補佐が「合成」と「特別昇給」を経て退職した場合、退職直前の給与は約41万円から約46万円となり、それに伴い約2600万円の退職金は1割以上もアップするという。
※週刊ポスト2012年3月30日号