昨年7月の地デジ化以降、テレビを観ることを止めた人の数を示すNHK解約件数は16.3万件(今年2月末見込み)に達している。
視聴者のテレビ離れは確実に進んでいるにもかかわらず、不思議なことが起こっている。民放キー局の2012年3月期決算(通期)予想は、震災の影響など微塵も感じさせない好業績のオンパレードなのだ。
日本テレビは3005億円の売り上げを見込み、経常利益は340億円と、歴代2位の数字。フジテレビは3226億円の売り上げで、経常利益242億円。視聴率万年4位のTBSでさえ、売り上げ3445億円、経常利益は125億円といった具合だ。
こうした収益を支える主役となっているのが、各局の「副業」だ。
フジテレビは本業である放送収入は4%減なのに、シルク・ドゥ・ソレイユやベルリン・フィル公演、映画『ステキな金縛り』のサイドビジネスが好調で、経常利益を押し上げた。
それらの収益はすべて、公共の電波を使って宣伝を行なったことにより得られたものだ。他企業であれば、同じ宣伝効果を望めば何百万~何千万円の出費を強いられるが、テレビ局は電波にタダ乗りでやりたい放題。その手口は最近、ますます巧妙になっている。
とりわけ業績の好調な日テレとフジは、新たにドラマと連動した通販事業に本格的に乗り出している。
松嶋菜々子主演の大ヒット・ドラマ『家政婦のミタ』(日テレ)内で主人公が使用したバッグや、小泉今日子主演『最後から二番目の恋』(フジ)に登場する食器など、劇中アイテムを自社ホームページの特設コーナーで販売するドラマ連動型通販ビジネスである。
視聴率40%の『ミタ』のような大ヒット作を生めば、「自社でライツを有するバッグや本など関連グッズの売り上げだけで数十億は見込める」(日テレ関係者)ばかりか、他の自社の通販商品への波及効果も計算できるという。
震災に“便乗”して、東北の観光誘致や特産品販売フェアなどを積極的に行なったTBS「赤坂サカス」の累計来場者は2800万人を超え(2008年3月オープン)、同社の不動産事業の収入は年間160億円と、いまや収益の大きな柱だ。
この手法を真似て、日テレは元本社跡地の麹町に高層ビル群を建設して再開発事業に乗り出す構えで、テレ朝も西麻布と六本木の超一等地を買い漁り、新本社や商業施設を建設する計画をブチ上げている。電波を宣伝に流用し放題なのだから集客効果は抜群で、リスクのないオイシイ計画だ。
※週刊ポスト2012年3月30日号