昨今、「夢は、サッカー選手」と答える男児が多い中、茨城県つくばエリアは「科学者/研究者」という答えが最も多い。居住を想定した体験ツアーには、近県から未就学児を含む親子連れが参加した。
つくば市内には、小惑星探査機「はやぶさ」を飛ばしたJAXAや広大なキャンパスを持つ筑波大学など多くの研究機関があり、約50か所が見学可能となっている。
茨城県つくば地域振興課が環境・教育などの専門家と発足させた子どもが育つ街研究会は、関東1都6県の20~40代にアンケートを実施。「子供が成長してもずっと住み続けたい」と答えた人は、「子供が育つ環境」を「価格」と同程度に重視して居住地を選んでいることがわかった。
関西ではけいはんな学研都市、関東ではつくば研究学園都市が、子供のための環境を意識した街づくりに積極的に取り組んでおり、東のつくばでは1泊2日の日程で親子体験ツアーが開催された。
ツアーにはインターネットで応募した親子10組が参加し、子供たちは、人間のように歩き、ボールを投げるロボットに食い入るように見入っていた。小学生の子供と参加した母親は「科学技術に関心を持って天才になってくれたら……」と目を細める。
分譲地を歩くうちに参加者からは、「都内で庭付き住宅は望めないが、つくばなら手が届きそう」「自然も身近に感じられ、故郷の景色に似ているので好感」といった声があがっていた。
子供を巡る環境デザインに詳しい早稲田大学・佐藤将之准教授は、「子供の可能性を引き出すには様々な体験をすることが大事。街の中に子供の居場所があると、子供は主体性を持って行動でき、自ら『育つ』ようになる」と話す。
子供が育つ環境を考えて住む場所を三度変えた孟子の母の教えにならって住まい選びを考える必要がありそうだ。
【子供の将来の夢(なりたい職業)】(複数回答)
/子どもが育つ街研究会調べ(2012年1月)
<つくばエリア:男児 n=28>単位=%
1位:科学者・研究者 25.0%
2位:サッカー選手 21.4%
3位:野球選手 14.3%
4位:技術者(エンジニア) 14.3%
<つくばエリア:女児 n=40>単位=%
1位:お菓子やさん・パティシエ・パン屋さん 32.5%
2位:芸術家 15.0%
3位:漫画家・作家 12.5%
関東平均ではスポーツ選手や芸能人などが目立つが、つくばエリアの子供は「科学者・研究者」「芸術家」「漫画家・作家」志望の傾向が顕著に。「つくばでは、子供を“育てる”ことより、“育つ”ことを意識した街づくりをしています」(子どもが育つ街研究会・原田令子さん)
※週刊ポスト2012年4月6日号