原発事故から1年が経つが、放射能の除染はようやく始まったばかりだ。除染といえば国が主導して取り組むイメージがあるが、実際はどのような枠組みで行われるのか、東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。
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東京電力の原発事故から1年経って、ようやく国の除染活動が本格化する。被災地では地元自治体やボランティアによる独自の作業が続いていたが、これからは国との共同作業になる。第1号は千葉県流山市だ。
「千葉県流山市は(2月)29日、放射性物質汚染対処特措法に基づく『汚染状況重点調査地域』に指定された東北、関東8県104市町村で初めてとなる除染実施計画を策定し、国に認可されたと明らかにした」(共同通信、2月29日配信)
国の対応はいかにも遅まきの感があるが、その点は措こう。ここで注目したいのは費用負担の問題である。なぜかというと、これまであたかも「除染費用は国が負担する」と読めるような報道が続いてきたからだ。
先の記事もそうだし、東京新聞を含めて他の新聞にも「国が費用を原則負担」という記事が散見される。実は、これは正確ではない。たしかに国の予算で除染するのだが、その後で国が東京電力に費用を請求する仕組みになっているのだ。
国の除染がどういう枠組みで実施されるかというと、根本は記事にもある放射性物質汚染対処特措法である。この法律は福島原発事故を受けて、議員立法で昨年8月に成立した。
その第43条には「国は環境汚染に対処する施策に必要な財政上の措置その他を講ずるものとする」(一部略)とある。だから、除染はまず国が予算措置を講じて実施する。その限りで報道は間違いではない。
ところが、続く第44条にはこうある。「この法律に基づく措置は原子力損害賠償法第3条の規定により関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする」(同)
つまり最終的に除染費用は東電が負担する。ここで言及している原賠法3条は「事故で損害を与えたときは原子力事業者が賠償の責めに任ずる」と定めたうえで、ただし書きで「異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない」としている。
政府は一貫して「今回の地震と津波は異常に巨大な天災地変ではない」という立場なので、賠償は東電の責任になる。「だから東電は除染負担から逃れられませんよ」という理論武装をしっかり法律に書き込んでいるのだ。
※週刊ポスト2012年4月6日号