福島第一原発の事故発生後、福島県を筆頭に、東北地方や関東地方において風評被害が相次いでいる。
しかし、科学的事実に目を向ければ、現在報告されている放射線量は健康に問題のないレベルだ。東京女子医科大学放射線腫瘍学講座の三橋紀夫教授がいう。
「『福島』というだけで危険視されていますが、広島・長崎やチェルノブイリの例をみると、1度に受ける放射線量が100ミリシーベルトを超えなければ、基本的に健康被害は生じません」
福島県が県民約1万人を対象に原発事故後4か月間の外部被曝量を測定したところ、20ミリシーベルトに達したのは2人で、半数が年間1ミリシーベルト未満。100ミリシーベルトには達していない。
「内部被曝についても、心配いりません。福島の家庭の食卓を調査した民間研究がありますが、1日の内部被曝量はごくわずか。そもそもバナナを1本食べても、自然放射性物質のカリウムが含まれるので、内部被曝するものなのです」(三橋教授)
原発事故後、鼻血が出るなど体調の異変を訴える子供が続々と現れ、放射能の影響が疑われた。三橋教授は、むしろ親の過剰反応によるストレスが原因と見られるという。
「外で遊べない、食べたいものを食べられないといったストレスで子供が鼻血を出したりおねしょをするようになるのでは。放射線に過敏になりすぎるのは、風評という観点だけでなく、自分たちの体にも悪いのです」
震災以降、被災地の商店を支援する「ざくろ坂プロジェクト」の世話人を続けるノンフィクション作家の吉永みち子さんはこういう。
「子供のいるお母さんに『風評だから心配しないで』とはいえない面もあります。安全と安心は違う。どれだけ安全でも安心できなければ風評被害は生まれるのです」
改めて問われるのは政府の姿勢だという。
「最大の問題は行政への信頼がないこと。信頼を回復するには、これまで良心的な立場から原発に反対してきた人を、政府や安全委員会のメンバーに入れ、基準となるデータを厳しい目でチェックする。それなしに風評被害を収める術はありません」(吉永さん)
※女性セブン2012年4月12号