文部科学省は3月30日、最大震度7と想定した東京湾北部地震における首都圏の震度分布図を公開した。作成した東京大学地震研究所の纐纈一起教授(応用地震学)は、「試算の精度が甘い」ことを理由に自治体別の震度については明言を避けたが、女性セブンではあえて、この震度分布図を拡大し、自治体名を記したマップを作成した。
それでわかったことは、震度7が新たに想定された地域は、東京都では、台東区、荒川区、足立区、江戸川区、江東区、品川区、大田区。神奈川県では横浜市と川崎市の一部だった。
「東京湾北部地震の想定される震源は荒川河口。震度7となったのは、そこから近く、地盤が弱い沿岸部エリアが中心となっています」
武蔵野学院大学・島村英紀特任教授が、こう指摘するように、地震の揺れの大きさは、多くの場合、地盤の強さに左右される。地震に詳しい不動産コンサルタントの平野雅之さんがこう説明する。
「今回、震度7とされた多くは、“低地”と呼ばれるエリア。山の手に広がる武蔵野台地ではなく、もともと海だったところに荒川や多摩川などの上流から運ばれてきた土砂が堆積してできた土地です。こうした場所は人工的な埋立地ではなくても地盤が弱いんです」
たとえば、都営新宿線の船堀駅が震度7なのに対し、ひと駅違いの一之江駅は震度6強。そしてその隣の瑞江駅までいくと、再び震度7になっている。つまり、わずかな距離の違いで震度は大きく異なるのだ。
さらに、川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺の場合は、こんな事情が関係する。
「大型河川沿いには、洪水などであふれ出た水が低地にたまり、その後、土などが堆積することでできる軟弱な地盤『後背湿地』が存在します。武蔵小杉駅周辺は東に多摩川という大きな川が流れていて、こうした後背湿地が点在しているんです」(前出・平野さん)
新たな想定のもと作成された震度分布図をもとに、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実さんは「羽田空港が危ない」とこう示唆する。
「もともと羽田空港は埋立地の上にあるので地盤が弱い。震度分布図を見ると空港の右端に震度7のエリアがかかっていますから、地震で、滑走路が大きく陥没してしまう可能性があります。
空港に向かうモノレールや道路、橋、首都高速などの周囲のインフラが震度7に耐えられるかどうかも新たに調査しなければいけないでしょう。また川崎駅、蒲田駅も震度7の危険がありますが、東京と横浜の間に位置する主要ターミナルなだけに時間帯によっては甚大な被害が出てしまうかもしれません」
さらに渡辺さんが最も気にしているのは、スカイツリーの周辺。すぐ近くに震度7想定エリアがある。
「あのあたりは浅草、上野と観光客でごった返している上に駐車場が少ないため、渋滞が激しい。老朽化している家屋も密集しているから、1次被害だけでなく2次被害も心配です」(前出・渡辺さん)
※女性セブン2012年4月19日号