みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある同氏が、葬儀料金について考察する。
* * *
棺桶の料金がピンキリなのと同様、葬儀に付随する様々な項目の全てがピンキリだ。祭壇、骨壺、位牌に霊柩車、通夜振る舞いの料理まで、全てのものに大衆料金から最高級グレードのものまでとり揃っている。
これらの中からどのグレードを選ぶかで、葬儀全体の料金も大きく変わってくる。たとえば霊柩車。地方によって価格は変わるが、10キロまでの走行距離での価格を目安でいえば、最も高価なのがキャデラックの洋型で5万~6万円。昔ながらの宮型でも白木のものはキャデラックと同価格。
少しお値段が安くなって、リンカーン洋型で4万円から。宮型でも地味な黒い木を使ったものは3万円代。そして一番安いのが国産車の洋型で、なぜかエスティマが多いらしいが、2万円弱となっている。
本来は、棺桶はこのグレードで、霊柩車はこっちで、と緊密に紡ぎあげていくのが正しい。だが実際には、生前にある程度打ち合わせをしておかないと無理なようだ。
「とにかく全部安くあげて下さいよ」
葬儀社の人にそう頼むのは簡単だし、実際にそういう依頼は多いとか。質素な祭壇。合板の棺桶でも葬儀はちゃんと行なわれる。でもやっぱりみすぼらしいと感じる人も多いらしい。
通夜振る舞い料理のランクもグッと落ちる。寿司のネタは玉子にかんぴょう巻きにカッパ巻き。マグロなんて見る影もない。
「こんなところでケチったってしょうがないわよ!」
親戚などからそんな陰口をたたかれて、後悔する遺族も実際のところ多いという。
※週刊ポスト2012年4月13日号