棋界きっての人気プロ、武宮正樹・九段は、「打ち筋を見ると、打ち手の信念や人生観が見えてくる」と断言する。囲碁を打つことで己を表現し、敵のポリシーを知ることができる――功を上げ、名を成した現代の政治家やビジネスマンが、多忙な合間を縫ってでも碁盤に正対するのは、そうした理由もあるからだろう。
そんなゲームを知らないのはもったいない。だが、「自分も囲碁の世界に足を踏み入れたい」と思うものの、いざ19路の大きな碁盤を目の前にすると、「どう打てばいいかわからない」と戸惑ってしまうかもしれない。
漫画『ヒカルの碁』の監修者として知られる“囲碁界のアイドル”吉原由香里・五段が、これから囲碁を覚えたいという本誌読者のために「特別教室」を開講してくれた。
【1】同じレベルの仲間と切磋琢磨する
同レベルの囲碁仲間がいるとライバル心が刺激され、上達が早くなります。友人・知人と一緒に始めたり、最寄りの囲碁教室で棋力が近い打ち手を紹介してもらったりしてみてはどうでしょうか。
【2】上級者と対戦して自分の棋力を確認する
囲碁教室の先生や上級者に教わることも大切です。年配男性の場合、「今さら誰かに教わるのはちょっと……」などと考えがちですが、上級者との対戦は、自分の現在の棋力を知るうえで非常に役に立ちます。自分の打ち方のどこがいけなかったのか、先生や上級者ならどのように打つのか、恥ずかしがらずに聞きましょう。
【3】「感想戦」は上達の近道
対局後に対局者同士がその対局の着手の良し悪しについて意見を述べ合うことを「感想戦」といいます。感想戦は特定の場面で相手が何を考えていたのかがわかるので、上達の大きな手助けになります。対局中は「待った」ができませんが、感想戦では「あそこで別の場所に打っていたらどうなったのか」を検討することができます。試験問題の答え合わせをする感覚で、感想戦を楽しみましょう。
よしはら・ゆかり/1973年、東京生まれ。加藤正夫・名誉王座に師事し、慶應義塾大学在学中にプロ試験に合格。07年に女流棋聖タイトルを獲得。『ヒカルの碁』(集英社)の監修や大河ドラマ『篤姫』での囲碁指導など、囲碁の普及に力を注いでいる。02年の結婚後も「梅沢由香里」で棋士活動をしていたが、昨年3月の出産を機に吉原姓に改めた。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2012年4月20日号