小沢氏の「政治とカネ」問題には、検察と大マスコミが作り上げた虚構があまりにも多い。検察のリークに乗ってみたものの結果的には誤報だった例も少なくない。
それどころか、そもそも小沢報道は、基礎的な認識からして間違っていることが多すぎる。
その典型が「(小沢氏の政治団体「陸山会」が購入した)土地代金4億円の出所がコロコロ変わる」というものだ。
〈小沢被告側はこれまで土地代金の原資の説明をたびたび変遷させてきた〉(産経2012年1月10日付)
〈4億円の出所を巡る元代表側の説明は二転三転してきた〉(日経2011年9月28日付朝刊)
だが、実際には小沢氏は一貫して「個人資産を陸山会に貸し付けた」と説明し続けている。
「小沢は説明責任を果たしていない」という決まり文句も同様である。
〈私たちは小沢氏に対して繰り返し、国会で説明責任を果たすよう求めてきた。ところが、氏は国会に出ていくことも、記者会見での突っ込んだやり取りも拒み続けた〉(朝日2012年1月9日付朝刊社説)
〈批判を受けている問題が多く、説明責任も果たそうとしていない。小沢氏は潔く政治的、道義的責任を取り、今すぐ議員辞職すべきである〉(産経2011年9月27日付社説)
小沢氏は2009年3月の大久保元秘書逮捕の翌日から、オープンな会見を何度も開き、記者クラブの執拗な質問にも答え続けている。強制起訴された以上、問題は国会ではなく司法に委ねるべきだということも、そうした会見で繰り返し語ってきたことだ。
すべてが小沢批判ありきで書かれるから、こうした基礎的な部分まで意図的にねじ曲げてしまう。
小沢批判のためなら何をいっても許されるという風潮は、テレビのコメンテーターになるとさらにひどくなる。
小沢氏の元秘書3人が逮捕された後、2010年1月18日放送のTBS系『朝ズバッ!』では、キャスターのみのもんた氏が「石川議員は水谷建設から5000万円受け取った」と断言。翌日放送では反論に来た民主党議員らに、「何が信じてくれ? 何が潔白なの?」と詰め寄った。
元読売テレビ解説委員長の辛坊治郞氏は、検察審の議決を疑問視する声に対し、「実際そういうこといってる人たちの中には、明らかに小沢サイドからお金もらってる人が何人もいます」(2010年10月12日読売テレビ『朝生ワイドす・またん!』)と声を荒らげた。が、その根拠は何一つ示されていない。
さらに今春で政治評論家を引退する三宅久之氏は、「あれで小沢を無罪にするっていう裁判官は、よほどのポンスケだね」(2012年1月15日読売テレビ『たかじんのそこまで言って委員会』)と放言している。
どれも小沢氏が無罪の場合には、名誉毀損で訴えられてもおかしくない発言だが、小沢氏サイドが本気になったら、彼らはどうするつもりなのだろうか。
服部孝章・立教大学教授(メディア社会学)は、こう語る。
「小沢氏に無罪判決が出たとき、メディアはそれでも不当判決だと言い張るのか。皮肉を込めて、非常に楽しみです」
※週刊ポスト2012年4月20日号