iPadの商標をめぐるトラブル後も、「エルメス」などで同様の問題を起こしている中国の「名前泥棒」。実はこの問題の最大の被害者は同じ漢字文化圏である日本である。中国商標局のHPを検索すると、続々と「日本のもの」の商標出願が見つかった。
高島屋は8月末、上海での出店を予定しているが、この3月、「高島屋」(“島”は実際は簡体字表記。以下同)という名称がすでに中国で商標登録の出願がなされていることがわかった、と新聞報道された。高島屋は中国商標局に異議申し立てを行なったが、却下され、再度審議を申し込んでいる。もし「高島屋」という名称が中国で使えなければ営業や宣伝の活動に大きな支障が出る。
東京スカイツリーも中国で登録されている商標の影響を受けた。通常「スカイツリー」の中国語は「天空樹」だが、その言葉はすでに登録されていた。公式HPや、つい先頃改名された最寄り駅での中国語表記が「東京晴空塔」となったのはこうした事情があったからだ。
日本の名称が中国で商標登録されていたことが発覚して大きな問題となったのは、2003年の「青森」が最初だった。それを機にジェトロ(日本貿易振興機構)北京センターや国際特許事務所などが調査したところ、これまでに30ほどの道府県名を始めとする地名や、「米沢牛」など地域名付きブランド名が数多く冒認出願(第三者による商標出願)され、登録されていることが判明した。芸能人などの有名人も同様だ。申請人は企業、個人両方のケースがある。
それだけではない。今回、SAPIO編集部が調査したところ、「木村拓哉」や「電車男」も登録されていた。このほか、「明治」「大正」「昭和」「平成」という元号、「皇后」「皇太子」「皇居」といった皇室関連の言葉まで登録されていることが判明した(「天皇陛下」は何件も出願されたがいずれも却下)。小誌の問い合わせに宮内庁は、「こうした事実は把握していなかった」「皇室の活動に支障が生じることのないよう注意していく」と回答した。
さらに「靖国神社」に至っては、由々しきことに、便器関係の商品分野などで何件もの出願があった。さすがに却下されているが、これは嫌がらせ以外の何ものでもない。
※SAPIO2012年4月25日号