一般に公務員の病休は、民間企業(従業員50人以上)の最頻値をもとに連続で上限90日とされている。病休中は有給だ。この病休制度が「悪用」されている実態が判明した。
奈良市のゴミ収集事業などを担当する環境部環境事業室では、2010年度に現業職員のうち実に44%が「病気休暇」を取得し、他の市職員の取得率の4倍にもなることがこの1月にわかった。
これを受け、同市では外部の有識者による検討委員会を設置。同委は同市職員の病休取得状況を調査し、3月27日に報告書を提出した。本誌はこの報告書を入手した。
報告書は、職場のモラル崩壊に言及している。
〈平成23年1月5日には収集課138名中57名が、1月6日には55名が何らかの休暇を取っている。約10名中4名が一番忙しい時期に休暇を取っているのである。(中略)業務遂行の観点からすればかなり無秩序な実情が浮き彫りになる〉
この報告書を作成した同委の委員長、上智大学法学部の楠茂樹・准教授は問題点を指摘する。
「職員の大半は真面目に働いているのですが、一部の職員が異常なほど病休を取り、その分の作業負担を他の職員に押し付けているというのが実態です」
この奈良市の環境事業室でサボリの風土が生まれたのは、実は昨日や今日の話ではない。2006年に旧環境清美部の清掃職員が、5年9か月でたった8日しか出勤しなかったのに、その間の給与2700万円を満額受け取っていたケースが発覚して問題になった。同様に病欠を繰り返していた15名の職員が停職処分を受けたが、報告書によれば、30日以上病休を取得した職員のなかには、この2006年の事件で処分された者が8名も含まれていたという。まったく懲りていないのである。
奈良市のケースが異常かというと、そんなことはない。同種の「働かないアリ」は全国各地に生息している。
昨年12月には、三重県の志摩広域消防組合の消防士が、病休中にパチンコ店に出入りしていたことが発覚して、停職処分を受けている。今年に入ってからも、兵庫県加古川市の清掃職員や、高知県中芸広域連合消防本部の消防署長が、病休中にゴルフをしていたとして停職処分を受けている。奈良市の例は氷山の一角だ。
公務員の給与・雇用制度に詳しいジャーナリストの若林亜紀氏はこういう。
「一部の公務員の間では、病休の悪用が常態化しています。公務員には、他にも『分限休職』という、心身の故障などを理由に給与の6~8割を得ながら3年間休める制度があり、これを悪用するケースも多い」
※週刊ポスト2012年4月27日号