4月12日午後1時過ぎ、京都・祇園で起きた軽ワゴン車の暴走事故。運転手の故・藤崎晋吾容疑者(享年30)が事件発生時、てんかんの発作を起こした状態であったのか、そうでなかったのかが、現在争点となっている。
藤崎容疑者が運転していたのは勤務先の藍染め店の車だった。同店社長は、
「てんかんを持病に持っていたことを知っていたら、採用しなかったと思います。車に乗れなかったら、会社に必要ないですからね」
と、話しており、彼の病気について、冒頭のとおり知らなかったという。さらに一家と親しい人たちでさえ、藤崎容疑者にてんかんの持病があったことは初耳だったようだ。
しかし取材を進めていくと、そこには藤崎容疑者のように「てんかん」を隠し続けなければならない差別の深い闇があった。てんかん治療の第一人者である東北大学病院てんかん科の中里信和教授はこう説明する。
「てんかんの発作というと、大きな全身けいれんを連想されるかたが多いですが、突然恐怖感や寂しい感覚におそわれたり、動作が止まって一点を見つめる、あるいは無意識に何かの動作を続けるなどさまざまな症状があります。イライラや興奮などの症状が一過性に出現するかたも、きわめて稀ですがいらっしゃいます」
日本てんかん協会の久保田英幹副会長がこう説明する。
「患者さんたちは子供のころから、無視、殴られる、物を隠される、捨てられる、といった凄絶ないじめを経験しています。その72%の人たちが我慢している。そこには親の姿勢が影響しているケースもある。“人にはいえない恥ずかしい病気”と隠そうとする面もあると思います。成人の場合もそう変わりません。職場に病名を明かして解雇された人は山のようにいます」
それゆえ、特に就職の現場では、てんかんの持病があることを隠す人も少なくないという。さらに久保田副会長はいう。
「てんかんが悪いのではありません。自分の都合で隠した藤崎容疑者とその状況に追いこんだ社会の無理解や制度に問題があるんです」
※女性セブン2012年5月3日号