みごと日本が初優勝した、フィギュアスケート・世界国別対抗戦。日本選手は高い演技力と技術を磨きあげ、指先一本の表情にまで微細な優雅さを追い求める。一方、日本の応援席は「必勝」ハチマキで、日の丸の扇を振り回す。なんだかちょっと違うんじゃない? と指摘するのは、作家で五感生活研究所の山下柚実氏だ。以下は、山下氏の視点である。
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フィギュアスケート・世界国別対抗戦で、みごと日本が初優勝しました。これまで個人競技として知られてきたフィギュアスケート。次回のソチ五輪からは、団体戦も正式種目になるそうです。
国別対抗と、選手一人一人の戦いとでは、どのような違いがあるでしょうか。今回参加したモイヤー選手(カナダ)は「(団体戦は)簡単に流れが変わっていく」「最初はほかのチームに遅れをとっていたのが、最後の最後で3位に入ったので、勢い、流れが変わる瞬間がある」とコメント。
一人の選手の出来しだいで、順位が突如、入れ替わるスリル。そのあたりが個人戦にはない、醍醐味の一つになりそうです。
チームを応援する選手たちの姿も目新しくて、興味をひきました。採点結果を待つための空間・キスアンドクライでは、演技を終えた選手の背後で、他の選手によるパフォーマンスも繰り広げられました。
フランスチームは、兎の格好をした選手たちが輪になってダンス。イタリアチームは、数人の選手が組体操のようにペダルやサドルの動きを模して、自転車を漕ぐシーンを再現。まさしく自転車大国ゆえのパフォーマンス。
「お国柄」が滲み出ていました。個人戦では見られない、興味深い光景でした。
では、日本の応援席はどうだったかというと……。「必勝」のハチマキをして、日の丸の扇を振り回しています。なんだかちょっと違うんじゃない? と引いてしまった視聴者もいたのではないでしょうか。
一言でいえば、世界一のフィギュアスケートの優雅さとはかけ離れているという印象でした。
スケートの技量でいえば日本選手は間違いなく世界最高レベル。非常に高い演技力と技術を磨きあげてきている。指先一本の表情に微細な優雅さを追い求め、厳しい練習を重ねてきているのに……。
応援席がこれですか? 必勝ハチマキと日の丸の扇は、浅草・仲店に並ぶ外国人むけ土産のレベル。あるいは、戦争映画に出てくる特攻隊をトレース? あまりにも工夫の痕跡が見られない、単調・単細胞的な応援ぶり。
世界一のフィギュア国と釣り合わない、ちぐはぐさを感じた人も多かったのではないでしょうか。
ソチ五輪までまだ時間があります。日本らしい風土や文化的感性がどこか伝わるような、美しく楽しげなパフォーマンスを、スケート競技と同様に、練り上げてほしいものです。