失敗したとはいえ、国際的非難の中で、ミサイル発射を強行した北朝鮮。拉致問題では、「解決済み」という姿勢を頑として変えようとしない。
奇妙なのは、それに対する日本政府の姿勢だ。野田政権は表向き北朝鮮への経済制裁を続ける一方で、「反日教育」を行なっている国内の朝鮮学校を「高校授業料無償化」の適用対象にしようという動きが続いている(現在は文科省が審査中)。そればかりか、自治体レベルでは今も朝鮮学校に補助金さえ出しているのである。
なぜ、こんなダブルスタンダードが罷り通るのか、その裏事情をジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。
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手元に2種類の名簿がある。
一つは、「北朝鮮による日本人拉致問題の完全解決を図る東京都議会議員連盟(以下、拉致議連)」の会員名簿(平成23年12月9日現在)であり、民主党、自民党、公明党、共産党など都議124人のうち105人が加入している。特に自民党と公明党の都議は全員、拉致議連のメンバーだ。
重要なのはもう一つの「日朝友好促進東京都議会議員連盟(以下、友好議連)」の名簿(平成23年11月30日現在)である。こちらは“非公開”とされてきたものだ。
会員は36人。驚くことに、そのうち民主党10人、自民党4人、公明党17人、共産党2人の人が拉致議連と重複している。北朝鮮による拉致を批判しながら、友好を推進するという“二足のわらじ”を履いているのである。
東京都は1995年から都下の朝鮮学校10校に「運営費補助」の名目で補助金を支出してきた。金額は生徒1人あたり約1万5000円、年間2400万円にのぼる。石原慎太郎・都知事の強い意向で、今年2月議会で廃止が決まったものの、拉致問題が発覚しても、北が核実験を実施しても、予算化が続けられてきた。
この補助金創設を推進し、維持してきたのが友好議連なのだ。
朝鮮学校は全国に73校(2011年5月1日時点)あり、自治体による補助金制度は東京都だけではなく、全国の自治体に広がっている。文部科学省などの調査では、2009年度に27都道府県・124市区町村の補助金総額は8億1500万円に達した。そうした補助金は「反日教育」に使われてきただけではなく、資金難に陥っている上部団体である朝鮮総連によって流用されていた疑惑まで報じられている。日本国民の税金が経済制裁をかいくぐって北朝鮮に送金され、核やミサイル開発に使われていた可能性さえ否定できない。
北朝鮮によるミサイル発射の裏で、各自治体でも遅まきながらようやく補助金見直しの議論が始まった。「廃止」を決めた東京都に続いて、大阪の橋下徹市長は、予算で計上されていた2650万円の補助金を凍結。松井一郎・大阪府知事も府下の朝鮮学校8校に対する約8100万円を支給しない方針を固めた。
しかし、その一方で、兵庫県と神戸市が県内の朝鮮学校7校に計1億円以上を交付しているのをはじめ、群馬県は県内唯一の群馬朝鮮初中級学校(40人)に1人あたり5万9000円、総額236万円の補助金を交付。三重県も四日市朝鮮初中級学校へ300万円の補助金を交付している。また、神奈川県議会は3月15日に朝鮮学校5校に約6300万円を支出する予算案をなんと全会派の賛成で可決するなど、多くの自治体がまだ予算化を続けているのである。
なぜ、朝鮮学校への補助金を廃止できないのか。
その背景には、口では北朝鮮への「制裁」や「拉致問題解決」を叫びながら、裏では国内の在日組織から有形無形の支援を受けるという政治家の鵺(ぬえ)的姿勢が、中央から地方議会にまで広がっている実情がある。
地方議会には、保守系・革新系を問わず、地元のパチンコ業者をはじめ総連に近い業者などの支援を受けている議員が少なくない。同議連は東京都で1995年に補助金制度が始まる原動力となった。現在も活動中だ。
※SAPIO2012年5月9・16日号