国内

ネット右翼「在特会」 会員1万人超は日本の右翼団体中で最大

「在日韓国人は出て行け」「中国人を殺せ」。ネットで過激な右翼的言論を書き込む「ネット右翼」と呼ばれる人たちがいる。その中で実際にデモをしたり、集会を開く「行動するネット右翼」が現れ始めた。最大の団体は、「在日特権を許さない市民の会」(通称・在特会)だ。このほど一年に渡り彼らを取材し、『ネットと愛国~在特会の闇を追いかけて』(講談社刊)を上梓したジャーナリストの安田浩一氏に「ネット右翼のリアル」を聞いた。(取材・文=ノンフィクション・ライター神田憲行)

 * * *
――そもそも、なぜ「ネット右翼」を取材しようと考えたんですか。

安田:もともとは日本に住む外国人労働者問題を取材していたんです。そのときに彼らが住んでいる地域住民の「冷たい視線」みたいなものを感じていました。そんな中で、中国人研修生が警官に射殺されるという事件が起きて、遺族が国を相手取って、2007年に裁判を起こしました。

 その裁判所に在特会を含むネット右翼と呼ばれる人たちが日章旗を立てて押しかけてきて、「オーバーステイしたのに日本に損害賠償するとは何事だ」「中国人は射殺されても仕方ない」という抗議活動を展開したのを目撃したのが始まりです。
 
 私が衝撃を受けたのは、その言葉の激しさとともに、彼らの「普通さ」でした。

――「普通さ」?

安田:ええ、私が今まで取材したことがある既存の右翼団体とはまるで違っていました。既存の団体はいわゆる黒塗りの街宣車に乗り、コワモテの戦闘服を着ていたりするんですが、ネット右翼は普通の若者だったり、おばちゃん、おっちゃんだったんです。そんな町でいくらでもいるような普通の人々が、刺々しい言葉を吐く。

 それで彼らの姿をもっと知りたくて、デモや集会に「見物」しにいくようになったんです。毎週どころか、週に2回とかもあったので、もう何十回見に行ったのか数えきれませんね。私は彼らの主張に1ミリも同意しませんし、シンパでもない。でも彼らを「右傾化する現代若者」というわかりやすい論理に回収して無視することは無いと思った。

――「行動するネット右翼」と既存のリアル右翼と、どう違うのでしょうか。

安田:既存の右翼団体には、基調に「美しい日本」の姿みたいなのがあって、そうなるための原理を導き出して、行動します。是非はともかく、そういう「美学」みたいなのがある。でもネット右翼にそういう基調はなくて、あるのは現状への不満、不安であり、それは在日外国人や、メディア、左翼、被差別団体よってもたらされているという「被害者意識」なんです。

 逆に言うと、読まなければならない本とか、学ばなければならない知識とかがないから、誰でも簡単に入れて、簡単に抜けられる。ネット右翼って、バリアフリーなんですよ(笑)。

――どのくらいの人数がいるのでしょうか。

安田:「在特会」はホームページにアクセスして、メールアドレスを登録するだけの「登録会員」も含めると1万1000人。これはあらゆる右翼団体の中で日本最大です。ただその中で実際に集会に参加したり、行動しているのは1%ぐらいじゃないでしょうか。

――実際に彼らを取材してみて、どんな印象でしたか。

安田:第一印象は「あ、怖くない」。デモや集会では刺々しい言葉を吐いても、プライベートで会うと、物腰の柔らかい人たちが多かった。東日本大震災が起きたときに、私を心配して、わざわざ電話くれた人もいたぐらいですから。

――安田さんの記事やこの本に対して抗議とかもなかったんですか。

安田:それが両陣営からあります(笑)。集会のたびに手裏剣みたいに名刺を配っていますから、非通知でいきなり「あなた国籍はどこ?」とか「なんで在日の犯罪も報道しないんだ」とか、ひと言で切るパターン。あとはネットに、私に対する誹謗中傷の書き込むぐらいですかね。肉体的に脅威にさらされたことはありません。

 また在特会を批判する陣営からは、「在特会に対して融和的」「批判が鋭くない」という指摘も貰っています。

 この指摘は甘んじて受けます。でも私の仕事は在特会に拳を見せることではなくて、彼らがどんな人間なのか伝えることですから。

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン