南シナ海の南沙諸島や西沙諸島などの領有をめぐって、中国とフィリピン、ベトナムなど東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国が一触即発の状態になっているなか、中国人民解放軍は南シナ海に面する海南島に原子力潜水艦が停泊できる秘密基地を建設していることが明らかになった。
米軍の軍事衛星が撮影した映像を解析して分かったもので、秘密基地の建設場所は海南島の三亜市で、ミサイル貯蔵施設も併設しているという。
海南島には以前から中国海軍が秘密の造船所で空母を建造しているほか、その停泊基地も建設しているとの情報が伝えられてきた。このため、米軍の情報部門では軍事衛星で海南島の監視活動を続けてきたところ、3隻の原子力潜水艦が頻繁に三亜付近の海域に出没していることから、潜水艦の航路から秘密基地の存在を突き止めた。これらの原潜には射程8000km以上の巨浪二型(JL-2)と呼ばれる弾道ミサイルを搭載している可能性が高いとみられる。
このほか、ミサイル駆逐艦や巡洋艦なども海南島の基地から南シナ海洋上に長期の訓練運行していることが分かったという。これらの軍事施設は木々や建物などでカモフラージュしており、地上や海上からは一見しても分からないように作られている。しかし、上空からの場合、風向きや偵察衛星のカメラの撮影角度によっては、識別できるという。
一方、中国の梁光烈・国防相が4月6日から16日まで南シナ海に面する広東省や広西荘族自治区の海軍基地を視察し、海防の重要性を強調している。
中国は南シナ海の領土・領海をめぐって、ASEAN諸国と対立、局地的な軍事紛争も発生している。特に、米軍も来年から南シナ海に海兵隊を派遣する方針を決めていることや、米軍とフィリピン軍が定期合同演習「バリカタン」を実施していることに、中国側は米軍を強く批判。4月22日から27日まで、中国とロシア両国海軍による史上最大規模の合同軍事演習が黄海で実施されたが、これも米軍を強く意識したものとみられる。