国内

ネット右翼 反・在日だがリアルに在日の人と接した経験なし

「在日韓国人は出て行け」「中国人を殺せ」。ネットで過激な右翼的言論を書き込む「ネット右翼」と呼ばれる人たちは、どんな生態なのか。『ネットと愛国~在特会の闇を追いかけて』の著者であるジャーナリストの安田浩一氏に聞く「ネット右翼のリアル」。3回連続シリーズの最終回をお届けする。(取材・文=ノンフィクション・ライター神田憲行)

 * * *
――ネット右翼は、なぜあんなに刺々しい言葉を投げかけるのでしょうか。

安田:ネット右翼団体「在日特権を許さない市民の会」(通称・在特会)の人たちに共通しているのは過剰なまでの「被害者意識」です。そんな彼らからすれば、在日、障害者、被差別部落出身などいわゆる「社会的弱者」と言われている人たちこそ、守られて優遇させているように見える。だから彼らに対して罵声を浴びせるのです。

 在特会で反・在日といいつつ、リアルに在日の人と接した経験がある人はほとんどいない。その証拠に、在日がほとんどいない地域に支部がいっぱいあるんです。今度山形支部ってできるらしいんだけれど、山形に大きな在日団体があるとは思えない(笑)。

――アメリカに対しては、ネット右翼の意見はどうなんでしょうか。

安田:ほとんど聞かないですね。沖縄で反フジテレビのデモがあったんですが、なんで沖縄でそんなデモをやったのかその不思議さは置いといて(笑)、その中で「全ての県民が米軍基地撤退に賛成しているわけじゃないぞ」ってシュプレヒコールを挙げていました。

 沖縄県民でデモに参加した人がさすがに主催者にクレームを付けたんですが、反応がなかったそうです。彼らにすれば米軍基地に反対するのは左翼、だから自分たちは米軍基地に賛成するという立場なんです。原発問題もそうで、「反原発=左翼」というわけのわからない公式があの人たちの中にある。どうあるべきかというより、反ナニナニという。

――うーん、それだけ聞くとまるで子供の理屈じゃないですか。

安田:そうなんです。だから伝統的右翼、保守派から「在特会は理論がない」という批判が浴びせられています。逆にいうとシンプルだから、不満不安を抱える人たちに訴える力はあるのかなと思う。

「社会主義建設のために」とか「格差社会解消のために」などというありきたりな言葉には、言葉の持つ正しさ以外に力強さを僕は見いだすことができない。でも、「許せない」とか「倒さないといけない」というと、言葉が刺を持って、不満を抱える人に深く突き刺さるんです。

――これからも在特会が大きくなっていくと思いますか。

安田:母体の裾野は広がっていくでしょう。これから日本に中国人が増えていくのは目に見えていて、それに比例して異文化が混在するカオス的な状況を「怖い」と恐れる人たちも増えるだろうから。在特会が「アホらしい」と思って辞めても、不満・不安を解消したわけでもない。

 でも在特会という組織自体が膨れあがっていくかというと、私は疑問です。というのは彼らの運動が先鋭化・純化してきているからです。彼らの中には、「いま俺たちは権力と戦っている」という悲壮感がある。その先鋭的な部分がどこかで爆発するような気がしてならない。昨年7月にノルウェーで銃を乱射して77人を殺害したブレイビクのような男が出てこなければいいなとひたすら願っています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン