現在の日本の改革者の象徴ともいえる橋下徹・大阪市長だが、この「橋下人気」を海外の識者はどう分析するのか。30年以上にわたり日本政治、日本と国際社会の関係を取材し続けてきたオランダ人ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(アムステルダム大学名誉教授)が読み解く。
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既存の政治に対して有権者の不満が高まった時、人々は特定の政治家もしくは政治グループに対し、そのはけ口を求めがちだ。そこで台頭するのが「ポピュリズム」である。現在、橋下徹という政治家が、大阪のみならず日本全国で期待を集めているのも、まさにポピュリズムの典型だ。
私はポピュリズムを全面否定はしない。有権者が政治に不満を抱くのは、将来に不安が大きいからだ。ポピュリズムに乗って登場する政治家にも、その不安と真摯に向き合い、解決策を見つけようと努力する者がいる。
だが、日本では哲学や理念が感じられない「偽りのポピュリズム(False Populism)」が広がりやすい。
外国人の目に映る日本政治は、実に奇妙なものだ。テレビを通じて有名になった“タレント”たちが、いとも簡単に政治家へと転身していく。こんなことは欧米ではまずない。一方で、政治家自身もテレビを利用し、自らの知名度を高めようとする。テレビは「偽りのポピュリズム」を増幅し、人々を間違った方向へと導く元凶である。
■聞き手・構成/出井康博(ジャーナリスト)
※SAPIO2012年5月9・16日号