今年でデビュー40年の松任谷由実(58)。トップミュージシャンとして常に時代の先を疾走してきた彼女の歌は、いまも私たちのなかで輝き続けている。
ユーミンが影響を与えてきたのは、若い女性たちばかりではない。シンガポール出身で、東京を拠点に世界的な活躍をしている写真家、レスリー・キーさん(41才)は、2001年以来、ユーミンのジャケット写真を撮り続けている。彼は「ユーミンは私の人生を救ってくれた。彼女の歌に出合わなかったら、絶対いまの自分はないと思う」とまで語る。
「私が13才のときに、女手ひとつで育ててくれた母が死に、妹とふたり、養護施設に入れられました。それから毎週、金土日は日系企業の工場で働いていました。そのとき一緒に働いていた日本人にもらったのが、ユーミンのカセットテープ。
初めて聴いたのは『DA・DI・DA』(1985年)でした。日本語はわからなかったけれど、サウンドがとても視覚的で、優しさのなかに強さもあって。すごくイマジネーションが広がった。地球、宇宙、海、空…」
それからユーミンを聴くためにお金を貯め、レコードプレーヤーを買ったのだという。
「最初に買ったレコードは『ダイヤモンドダストが消えぬまに』。彼女の声に癒されて、この声が私のこれからの人生の答えを見つけてくれるかなとさえ思った。ユーミンが私のハートビートなんです」(レスリーさん)
ユーミンの歌に励まされ、その後、カメラマンとして成功を収めたレスリーさん。撮影で会ったときの彼女の印象をこう話す。
「初めて会ったときに、彼女の人間味に惚れてしまいました。ユーミンはスーパースターだし、私のなかでは“超遠い”存在。でも、とてもフレンドリーで、一生懸命生きている人間とはきちんと向き合って、会話をする。自分をスペシャルだと思っていないのがユーミンの素晴らしさ。普通に生きることがいちばん贅沢だっていうことを、彼女が教えてくれました」
都会的でおしゃれ。だけど“私たち”の感情を的確に表現してくれるのは、ユーミンが「普通」を大切にしているからかもしれない。
※女性セブン2012年5月10・17日号