人間が他の動物と決定的に違う点は、将来について考えることができるかどうかだという。それはつまり「夢」を持つか否かということ。フジテレビ系バラエティー番組『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が、そんな人間の「夢」について。脳科学的に解説する。
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私たち人間にとっても生殖は大切な行為です。したがって大きな夢のひとつとして「結婚」を意識します。しかしそれは他の動物のように、生殖だけを目的としたものではありません。人間の結婚には、「継続的な家族」を形成し、「家族によって子育てをする」という目的があるのです。
人間にとっての夢の基盤は、この「家族形成」にあるといえます。
子供が夢に見る「職業」とは、本来、家族を維持するためのリソース(お金)を得る手段にすぎません。しかし子供たちがそれぞれに「職業」を夢見ることは、「家族を形成する」という本質的な夢につながるものとして、とても大切なことなのです。
成長期の真ん中にある小学生やそれに続く思春期の若者が夢を持つこと。そして、それに向かって努力をすることは、大人になるうえでとても大事なことです。
この時期に家庭不和や虐待などによって、「夢を持ち努力する環境」を正しく与えられないと、「家族を形成する」という人間にとって本質的な夢を持てなくなってしまうことがあります。人間の脳の成長は25才ごろで終わってしまいますから、いわゆる「ニート」に典型的なように、この年頃になって夢を持たない、持てない人が現れてしまうのです。
しかし脳科学的には本来、未来記憶(将来の目的や計画、状態などに関する記憶)の能力は、脳の成長が止まって以後も衰えません。ですから“もう、これでいいんだ”と現状に満足してしまうのではなく、「成長したい」という意欲を持ちさえすれば、中年以降も、場合によっては70~90才になってからでさえ夢を持つことはできるのです。
では、夢をかなえる方法を少しだけ紹介しましょう。夢がかなったときの喜びを強くイメージしてください。これは、やる気につながり、努力に結びつます。
自分の夢を何かに書き留めておくとさらによいでしょう。夢を失いかけたり、忘れた時に役立ちます。また、中高齢で夢を持つと平均余命が7年も長くなることがわかっていますから、ぜひ、夢を持つようにしましょう。
※女性セブン2012年5月24日号