GWに発生した関越道の貸し切りバス事故は、「交通と安全」をおおいに考えさせる事故となった。「左側は危ない」などと専門家が語るなど、乗り物に乗る際に、「どこに乗るか」が重要であるかを知らしめた。
では、バスではなく、鉄道事故で生死を分ける乗車位置はあるのだろうか。 それには、脱線・転覆が起きた際、車両の中はどういう状況が発生するのかを知る必要がある。
2005年4月の兵庫・宝塚市のJR福知山線脱線事故では、死者107名のほとんどが脱線した1、2両目に集中した。通勤時間帯と重なり、混雑した車内で折り重なるように倒れた乗客の多くが圧死しているが、金属製の手すりやひじ掛けに身体を打ちつけた負傷者も少なくなかった。乗客の1人は「つり革を持っていられず、後方に倒れた。その上に乗客が重なり、身動きできなかった」と証言している。
鉄道評論家・川島令三氏はこう指摘する。
「電車事故の揺れは凄まじく、揺れに対処することが被害を軽減するカギとなる。電車は構造上、連結部のある車両端が“オーバーハング”といい、一番揺れます。長距離電車で車両端をトイレにしているのは、揺れの大きい車両端を座席にしないためです」
では、どのあたりの車両に乗り、どこに座れば、最も揺れに対処できる安全な席といえるのか。川島氏が続ける。
「通勤電車の多くは10両編成です。脱線や後方からの追突を避ける意味で、中央付近の5~6両目あたりが安全。さらに連結部の端から2~3メートルから車輪があり、そこが最も頑強に造られており、安全性の高い位置といえます。福知山線の事故でも、その位置に乗車した乗客は軽傷だったことがわかっています」
もう一つのポイントは、車両下に稼働モーターがあるか否かだ。通常、10両編成で4~6両はモーターが設置され、その重量分だけ車両の重心が下がって安定度が増すため、その車両の方が揺れには強いとされる。
※週刊ポスト2012年5月25日号