生活保護の受給者が、過去最高を更新し続けている。今年1月の受給者は209万人を超え、生活保護費は年3兆7000億円に達する見通しだ。その裏側にある風潮を、大前研一氏が解説する。以下は、大前氏の指摘だ。
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生活保護は憲法第25条に基づき「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度なので、なくすわけにはいかない。だが、受給条件が厳格でないため、安易に生活保護を受ける人が増えている。
最近よくある悪用パターンは、結婚して子供ができたら偽装離婚する、という方法だ。母親と子供は母子家庭として生活保護を受け、父親も依然として同居する。そうすれば、父親が月20万円稼ぐと両方合わせて月収が36万円くらいになり、年収430万円以上の“中流生活”ができてしまうのだ。
受給者日本一の大阪、その中心地ともいわれている西成区で橋下徹市長がGメンを配置して不正受給者の摘発に乗り出した、というニュースも流れている。だが、これまで自治体が、申請の段階で不正受給者の生活実態を把握できていなかったことが問題なのである。
一方、最近は20~30代の若者の受給者が全国的に増加している。彼らの間では、生活保護はネット上で「ナマポ」と呼ばれ、働くよりも楽だから利用しなければ損、という風潮が広がっている。
憲法第27条により「すべての国民は勤労の義務を負っている」のだが、それに反してもおかまいなしなのだ。恥も外聞もないのである。もはや性善説ではやっていけないモラルの退廃が常態化している。
※週刊ポスト2012年6月1日号