今年度予算の生活保護費は約3兆7000億円で、受給者は約209万人(152万世帯)。だが、不正受給の問題や、「働いたらバカを見る」と労働意欲を削がれる側面があるのもこれまた事実だ。
2007年には北海道滝川市の受給者夫婦が2年足らずの間に約2億円の保護費を騙し取るという事件が起きた。
「ナマポ富豪」を実現する“抜け道”にはいろいろな手法がある。代表的なのが偽装離婚を利用したケースだという。
大阪市内の福祉事務所に勤めるベテラン職員が語る。
「離婚して妻に親権を与え、妻は別居していることにして生活保護を申請する。母子家庭の場合は母子加算など支給額が増えるからです。ただし、実際には元の家に住みながら夫の給料で生活し、夫の所有する車なども利用する。実質的には全く離婚前と変わらない生活をするというやり方です。悪質なら返納を求めるが、別居の実態がわかりにくいケースが多い」
「贅沢」のイメージがある海外旅行中にも保護費は支払われる。受給者が福祉事務所相手に起こした裁判の最高裁判決(2008年)では、「住居が国内にある限り、支給対象となる」として渡航期間中の支給減額をした福祉事務所に支払いを命じた(ただし、渡航費用分が生活費と見なされず、保護費から差し引かれるケースがある)。
また、近年になって担当職員の頭を悩ませるのがペット問題だ。
「一人暮らしの高齢者にとって“家族の一員”という場合も多いので、高額で取引されるような動物でない限りは飼育を認めています。ただし、中には保護費を餌代に充て、自分の食費を極端に切り詰めてしまう受給者がいる。生活扶助という目的に合致するかどうか、判断が難しいところです」(厚労省社会・援護局)
※週刊ポスト2012年6月1日号