関東3県(千葉、埼玉、群馬)で取水停止となり、千葉県では約35万世帯が2日間も断水する騒ぎとなった。原因は埼玉県、千葉県など利根川・江戸川を水源とする浄水場で相次いで国の基準値(1g当たり0.08mg)を超えるホルムアルデヒドが検出されたことだった。
しかし、なぜ突然ここまで大規模な汚染が発生してしまったのか。そこにはホルムアルデヒドという物質特有の問題があるという。
京都学園大学バイオ環境学部の辻村茂男准教授はいう。
「今回のホルムアルデヒドの発生は、原因となる物質が浄水場で使われる塩素と化学反応したためではないかといわれています。しかし、原因となりうる物質は何百種類も存在し、中には植物性プランクトンまで原因になりえます。原因を突き止めるのは難しいかもしれません」
その後、ホルムアルデヒドの濃度は下がったものの、原因はいまだわかっていない。
埼玉県は21日、再発防止のため、工場などに化学物資の新たな排出基準を明確に定めるなどの法規制を国に求める方針を固めた。
しかし今後も、他の浄水場でも、ホルムアルデヒドが検出される可能性は高いという。環境工学が専門の京都大学松井三郎名誉教授がいう。
「今回の大規模な発生は珍しいですが、除草剤なんかでもホルムアルデヒドは発生する。すべての原因を取り除くことは極めて難しいでしょう。
今回、オゾンや活性炭を利用した高度浄水施設のある浄水場ではホルムアルデヒドは検出されませんでしたが(施設はあるものの、稼動させていなかった浄水場では、ホルムアルデヒドを検出)、こうした施設を作るには数億円もかかってしまうんです。現状ではいつ他の浄水場で発生してもおかしくないでしょう」
世界的にみて日本の水道水は基準が厳しく、比較的安全なものであることは間違いない。しかし、一刻も早い原因究明と、対策を講じてもらわぬ限り、安全神話はもろくも崩れ落ちてしまうだろう。
※女性セブン2012年6月7日号