重慶市トップや党政治局員などの職務を突然解任された薄熙来氏。氏の不正蓄財は4800億円にのぼるとの一部報道もあるが、なぜそこまで中国の役人は儲かるのか。そのカラクリを大前研一氏が解説する。
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政府は農民から収奪した農地を商工業地や住宅地に用途転換して転売し、差益を得ている。それが役人の不正・汚職の温床となり、農民の不満につながっているのだ。
中国の役人の腐敗は度を越している。
たとえば、先に失脚した薄熙来・前重慶市書記の場合、不正蓄財が1000億円あったとされる(約4800億円を海外送金していたとの報道もある)。だが、あのポジションで1000億円は少ないほうだと言われている。遼寧省の小さな市の課長を逮捕して調べたら、2000億円の不正蓄財が見つかったという情報もある。本人はクリーンに見えても、たいがい妻や息子、娘の夫など一族郎党が不正蓄財に手を染めている。誰でも叩けば埃が出てくる体なのだ。
今の「チャイナ・リスク」を最も肌で感じているのは、当の中国人たちだろう。中国商務省の調査では、過去約30年間で海外に逃亡した汚職官僚は約4000人、着服金額は約500億ドル(約4兆円)に上る。また、今年3月の全国人民代表大会における温家宝首相の政府活動報告によれば、海外に逃亡した役人のうち1631人を逮捕し、海外で77億9000万元(約1013億円)の現金や資産を差し押さえたという。しかし、これは氷山の一角にすぎない。
※SAPIO2012年6月6日号