月額6973円。東京電力が、モデルとしている一般家庭の平均電気料金だ。それが、約20年後には2倍の1万3946円になるかもしれない――。
電気料金といえば、東京電力が今年7月から、32年ぶりの値上げを検討している。その値上げ率は平均10.28%。東電管内の全原発の稼動停止により、火力発電の燃料費が大幅に増加したことなどが原因だという。
不況で給料もなかなか上がらないなか、この値上げは家計にとってかなりの打撃だが、冒頭のように、料金が倍となれば、その負担は計り知れない。
この試算が明らかになったのは、5月9日に開かれた経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会でのこと。同委員会では、2030年時点での原子力発電が起こす電力の割合を、0%、15%、20%、25%、35%と仮定して、それぞれの場合の電気代を5つの研究機関が各自シミュレーションした。
いちばん値上げ率が高いのは、原子力発電所の稼働を0%とし、火力が50%、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーによる発電を35%という前提で試算した場合だ。各シミュレーションによると、最大だと、冒頭で述べたように2倍の値上げになるという結果が出た。
ちなみに、最低だと約4割の値上げとなる。それにしても、なぜ2倍にも値上げしてしまうのか。その理由は、電力の需要が大幅に減少するためだという。
もし、電気代が上がっていき、国民が節電に取り組んだら、需要が減少して、電力会社は価格を上げざるを得なくなる。国民が節電に取り組む度合が高くなればなるほど、値上げの率も高くなるというカラクリなのだ。
さらに、もうひとつの大きな理由を前述の研究機関のひとつに所属する大阪大学の伴金美教授が説明する。
「原子力を0にしたときに、その分を太陽光や風力といった再生可能エネルギーで補わなければなりません。その場合、そのための発電設備をたくさん作らなければならない。例えば、原発1基分のエネルギーをまかなうための太陽光発電の施設を作るには、山手線内側分の敷地面積が必要になります。
広大な面積のため、都会にではなく、山間部などに作らざるを得ない。そうすると、エネルギーを送る送電網を新たに作らなければなりません。また、個人や業者が自家発電した再生可能エネルギーの購入もしなければならず、その料金も上乗せされます。さらに、原発を廃炉にするコストも含まれているんです」
それ以外にも、火力に依存することで増えるという二酸化炭素の削減費用もかかり、これらすべてを国民が負担しなければならないということになる。
※女性セブン2012年6月7日号