毛筆と墨を用い、白い紙に文字をしたためる。行為はシンプルだが、書かれる文字にはその人柄や想いが表われる。女流書家たちが生みだす美しき一筆は、貴重な人生訓である。
書家・木下真理子さんの雅号は木下秀翠。6歳より書道を始め、書道研究の第一線として知られる大東文化大学に進学。戦後の日本書道界を牽引した青山杉雨氏(故人)の弟子・高木聖雨氏と出会い、師事。昨今の筆文字アートブームのなか、伝統芸術としての書道を正統的に継承する。
『読売書法展 特選』『謙慎書道会 推薦顧問賞』など受賞歴多数。千年以上の伝統の本流をいく読売書法会に所属し、自己表現とは異なる、伝統書道の本質と奥深さを現代に伝える。
今回、読者のための一筆として、漢字のルーツ「金文」で『献身』と書いてくれた。
「ビジネスは利潤の追求が最重要テーマとされていますが、自己主張や損得勘定ではなく、いかに相手のことを思って動けるか。この『献身』の心が、深い信頼関係を築き、やがては大きな展開にも繋がると思います」(木下さん)
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2012年6月8日号